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涼宮ハルヒの誘惑 その1

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2008/06/04(水)
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/21(水) 16:02:58.98 ID:ICLcajwP0
放課後になるといつもの習慣というか帰巣本能というか足が自然と向かう場所がある。

言わずもがなのSOS団の部室だ。正確には文芸部の部室なのだが、この学校で文芸部の存在を覚えている奴なんているのかね?

今日はハルヒが担任の岡部から進路指導とやらで呼び出されているので一人で部室に向かう。

部室のドアの前に立ち、これも習慣となったノックをして、返事があってから部室のドアを開けるのだが今日はなぜか返事がない。

長門の三点リーダの返事でも長門検定一級を自負する俺になら分かるのだがそれすらない。

つまり現時点でこのドアの向こう側には誰もいないのだ。

珍しいこともあるもんだと思いながらドアを開け、いつもの自分の席に着く。

が、

目の前に古泉がいないのでボードゲームもカードゲームも相手がいないのでやることができない。

まさか古泉の真似をして一人で詰め碁というわけにもいくまい。

やってできないことはないだろうが古泉の趣味に自分から擦り寄るのはなんとなく腹ただしい。

うん、俺って普通の人間が経験できないような事を経験してきた割に器が小さいな。

自分で認識してちょっとへこむ。

仕方がない。ハルヒもいないことだし久々にネットサーフィンでもしてみますかね。






2 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:04:23.54 ID:ICLcajwP0
PCを起動させ立ち上がるのを待つ。ブラウザを立ち上げると我らが団長殿が描かれたSOS団のロゴがこれ見よがしに画面に現れる。

ま、実際は長門に描きなおしてもらっているんだがな。

しばらくカチカチと文字通り電脳世界を彷徨っていたのだが、一般的というか、必然というか、健全な肉体を持つ高校生なら当然といっても過言でない、とい うかその通りなのだが、アダルトサイトに行き着く。

グラマラスなボディやスリムな裸体を眺めていると、ついつい普段接している女性陣の顔とその服の下を想像してしまう。

特にハルヒには押し倒されたりヘッドロックをかけられたりしているのでそのときに不可抗力で体に押し付けられるふくらみは体感済みだ。

バニーガールでどこが出てへこんでいるかは目でも確認済みだしな。

どかぁん!

文字通り爆発させるような音を立てて部室のドアが開いた。

誰が入ってきたかは言うまでもあるまい。ハルヒだ。

我ながら神速でブラウザを閉じる。うむ、すごいぞ俺。

「あー!もぅ!岡部のヤツ!腹立つ!ちょっとキョン!なに勝手にあたしの席に座ってるのよ!!!」

いかんいかん、岡部への怒りがこっちにまで波紋を広げそうだ。おとなしく席を立つ。

とりあえず、ハルヒの様子からエロサイトを閲覧していた事はばれてないようだ。

「いい?!SOS団の団長はわたしなの!そして団長の席はわたしの席なの!勝手に座ることは許さないわ!」




3 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:04:53.31 ID:ICLcajwP0
両手をあげて降参のポーズ。まるで古泉の仕草のようだ、しかしここは従順に降参の意を示しておいたほうがいいことは経験則から確実である。

「あんた、何してたの?」

「いや、特に何も。電脳世界を彷徨っていただけだ」

「ふぅん、ま、いいわ。お茶」

「朝比奈さんが来るまで待て」

あのお方の煎れてくれたお茶のほうが俺の100倍はうまいことは地球上の誰もが認めるで…はい、煎れます。

ハルヒの一瞥に負けた。

「ほらよ」

「んぐっんぐっ」

もう、飲んじまいやがった。かなり熱いと思ったのだがハルヒの口内と喉は耐熱加工でもしてあるのかね。

かちゃりとドアが開いて天上の福音が聞こえた。「あの、遅れてすみません」

SOS団の天使、あなたの愛らしさは地球を救います。

とたとたといった仕草で朝比奈さんが小走りに部室に入ってきた。

「あ、キョンくんがお茶煎れてくれたんですか?ごめんなさい、ありがとう」

いえいえ、朝比奈さんのためならお茶の一服や二服。




4 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:05:29.21 ID:ICLcajwP0
「あの…」もじもじ

なんでしょう?

「着替えますから…」

回れ右。

っとドアを開けたところで長門と出くわした。

「よう、珍しく遅かったな」

「…掃除当番」

なるほどね。やはりたまには掃除当番になるんだな。長門と入れ替わりに廊下に出る。

ドアにもたれて待っていると廊下の向こうから見慣れたニヤケ面が片手をひょいと挙げて近づいてきた。

「朝比奈さんの着替え待ちですか?」

ああ、お前も今日は遅かったな。

「HRが長引きましてね。この前行われた全国模試の結果、僕のクラスの平均点が担任の癇に触れたようで全員でお説教でした。」

テストの点なんぞ、個人の問題のような気がするがな。

「僕もその意見には賛成ですよ。」




5 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:05:54.90 ID:ICLcajwP0
などと古泉としばらくなんでもない話をして待っていた…

が…

いくらなんでも着替えが長すぎないか?そろそろ不審に思い始めた時、廊下に電子音が響きわたる。

ピピピ…ピピピ…!

古泉の携帯だ。嫌な予感が暗雲のごとく湧き上がる。

ディスプレイを見た古泉の表情からニヤケ顔がさっと消える。暗雲から雷が走っているのが見えたぞ。

「なんの連絡かお聞きになりたいですか?」すぐにニヤケ顔に戻ったものの幾分ひきつっている、古泉もその引きつりを隠そうとしてないようだ。

「なんとなくわかるが、言ってみろ、いや、言わなくていい、閉鎖空間だな」

「ご明察、この扉の向こうで何が行われているか早急に確認する必要があります」

俺はもたれていたドアからゆっくりと背中をはがし振り返る。ドアの隙間から黒い蒸気が噴出しているのが見える、気がする。

さながら地獄の扉といったとこだろうか。いや、妙な描写はいい。とにかくこのドアの向こうで何が起こっているか確かめねば。

ドアをノックしてみる。

「あのー、朝比奈さん着替え終わりましたか?」

ドアの向こうから




6 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:06:27.05 ID:ICLcajwP0
「えっ、いや、まだ…ですけど、あのっちょっと」「入っていいわよ」

朝比奈さんのわたわたした言葉にハルヒの不機嫌120%な声がかぶる。

古泉をちらりと見ると目礼してお先にどうぞのジェスチャー。

このやろう、俺は爆弾処理班じゃねぇぞ。心の中で毒づきながら地獄への扉を開ける。

はてな?どういった状況だ、これは。

ハルヒがPCの画面を見ながらなにやら怒ったような苦笑いのような複雑な表情を浮かべている。

朝比奈さんがその後ろに立って画面をみているが、顔を真っ赤にして両手を頬に当てている。

長門も珍しく本を読んでおらず朝比奈さんの隣に立って画面を見ている。

相変わらずの無表情だが…なんとなく興味深げに見ているような気がするが。

はて?長門の興味を引くような情報がネット上にあるとは思えんのだが。

「ほぉ・・・」

閲覧が終わったらしくハルヒがこちらを向くと同時に朝比奈さんがため息というか吐息というか熱っぽい息を吐いた。

両手はまだほほに当てたまま俺にちらちら視線を飛ばす。

長門は等速度運動で移動し、いつもの椅子に座って本を広げた。が、そのまま俺に顔を向けた。なんで?




7 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:06:59.78 ID:ICLcajwP0
「ねぇキョン」

なんですか、この女性3人に尋問されるような空気は。

「あんたブラウザに履歴って残るの知ってる?」

ぐぉ!しまった!とたんに顔面蒼白になるが自分の恥部を知られた思いにすぐ赤くなる。

なんちゅうこっちゃ、異性に自分の性癖の一端を知られるのは体がきりもみするくらい恥ずかしい。

俺の態度と表情、それに女性陣の反応を見てどうやら古泉は状況を悟ったらしい。

なんだその同情と哀れみと自愛に満ちた様なにやけスマイルは。お前も男だろうが。

しかし見ていたサイトが悪かった。いわゆるコスプレサイトとでも言うのだろうか。

女性が制服やら衣装やらをわざわざ着てから、服をはだいたりあられもない姿をとるというサイトだ。

内容はエアーコンダクターからナース、OL、女教師、バドガール、レースクィーン、等々、等々。

悪いことにその中には部室のハンガーにかかっている衣装と被っているものがあった。

具体例を挙げるならバニーガール、メイド、ナース、はもう言ったか。いやそんなことより。

とにかくこれでは俺が今まで朝比奈さんを劣情の目で見てきたようではないか。誓って言うが朝比奈さんで変な気になったことは…あったかな。

「あんたもこういうの見るんだ。というか趣味なんだ。」





8 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:07:19.77 ID:ICLcajwP0
ぬおぉ!ハルヒの一言一言がきつい!どうやって切り抜けようか!こういうとき嘘をつくとドツボにはまる、しかし開き直るのも厚顔無恥だ。

「いや、それはあれだ。そのまぁ」

「まぁ何?」ハルヒが笑顔で怒っている。おまえはデビュー当初の竹中直人か。

「キョン君って、あの、ああいうのが好きなんですか?」朝比奈さんが頬を赤らめながら目線をハンガーから俺に移す。ひぇえ!誤解しないで下さい!

「………」長門が目をそらした。照れてるのか?アンドロイドに羞恥心ってあるのか?それとも軽蔑されたのか?マジか?!

「彼も高校生ですし、異性に興味を持つのは成長過程で至極当然な生理現象ですよ。ご両親もご子息の健全な成長を喜ばしく思っている事でしょう。」

古泉がなんだかよくわからんフォローをしてくれるが同い年に言われると腹立つぞ。

「もちろん、僕も興味はありますよ」スマイルゼロ円。

そういう同じ側に立つフォローをしてくれ。

古泉が味方に立ってくれたおかげでハルヒは口をむにむにさせていたが。

「あんたの性癖に口を出すつもりはないけど、みくるちゃんと有希に変な気を起こしたらダメだからね!」

いや、起こしたことはない、起こすつもりもない。たまたまネットを徘徊してたら行き着いたんだ。

というか、その言い方だとお前になら変な気とやらを起こしても良いのか?

「んなっ!」うわっ一瞬で顔が赤くなった。怒りながら笑ったり赤くなったり器用なヤツだな。




9 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:07:48.79 ID:ICLcajwP0
そういえば鶴屋さんがハルにゃんにならおいたしてもいいとか何とか言ってたのを思いだす。なぜここで思いだす?

「と、とにかく風紀の乱れは絶対に許さないって事よ!分かったわね!」

鼻先にびしっ!っと指を突きつけられて、コクコクとうなずいた。

他にどうしようもなかろう?

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全員で校門をくぐり下りのハイキングコースをスタートする。

いつものように、ハルヒと朝比奈さんが先頭、次に長門、最後に俺と古泉が歩く。

結局あれから朝比奈さんはメイド服に着替えなかった。というかハルヒが着替えさせなかった。

そんなことしたら余計に意識してるみたいじゃないか。だれが意識してるかは俺もよく分からん。

「しかし、今日は失態でしたね」

ぐぬぬ、言われるまでもねぇよ。

「もし、どうしても我慢できないようであれば僕に相談してください」古泉が耳元に口を寄せてささやく。

一瞬で血の気が引いて距離をとる。古泉はのどの奥でおかしな笑い声を上げて。

「お相手するのは僕ではありませんよ。機関のつてでその分野のプロフェッショナルを派遣させます」




11 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:08:18.57 ID:ICLcajwP0
森さんの顔を思い浮かべてしまった。そんな俺の顔を見てまたおかしな笑い声を上げやがる。

「残念ながら森さんはそのような役どころではありません」

とにかくごめんこうむる。お前にはおろか機関にまで余計なしかも恥の極地のような借りを作りたくない。

古泉はそのままくすりと笑うと黙って前を向いて歩き始めた。

いつものとおりハイテンションのハルヒの話にくすくす笑いながら朝比奈さんがその隣りを歩いている。

そしてそれを見つめているのかいないのか無口な長門が続いている。

そのとき、誰もが予想していないことが起こった。大したことではないのだが、いや、個人的には大したことなのだが。

ハルヒは願望実現の力があると色々な人間が言っているのだが、これもあいつが望んだからなのか。

風が吹いたのである。吹き上げたのだ。

俺の前を歩いていた三人の娘さんが腰の周りにまいた布をふわりと持ち上げるくらいに絶妙なタイミングと角度で。

つまりハルヒ、朝比奈さん、長門。この三人のスカートがめくれたのだ。

ハルヒは、スポーティな紺色一色。動きやすそうだな。

朝比奈さんは、純白でふちにレースがあつらえてある。意外に大人っぽいな。

長門は、水色地に青の横ストライプ。中学生のチョイスだな。




12 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:08:36.43 ID:ICLcajwP0
どれも歩いているときなので少しよじれてヒップの割れ目とラインが微妙に出ていたのがすごく「こらぁ!エロキョン!」

うわーものすごい怒声。なんか近づいてきてる気がする。

朝比奈さんは前と後ろを押さえて顔真っ赤。時すでに遅しの行動だがかわいいのでそのままでいてください。

長門はスカートを押さえもしないで直立不動。そりゃ風は一瞬で止んだけどさ。ちょっと恥ずかしがる方が愛嬌があっていいぞ。

?なんだこの目の前に現れたこぶしは?

☆ ☆ ☆

一瞬意識が飛んだ。とっさに古泉が支えてくれなければ後頭部を打撲していたに違いない。

「きょ!今日は、かわいくないやつだから見ちゃダメぇ!」

ぐおおおぉおお、頭がくらくらする星が飛んでる地面が揺れるひざが笑う。

「なに?かわいいやつだったら見てよかったのか?」

「えっ…まぁキョンだったら…」

朝比奈さんが息を呑むのが聞こえた。

ぐぐぐああああああああ、まだくらくらする。ハルヒのヤツ何て言った?

「え?聞いてなかったんですか?」





13 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:09:10.40 ID:ICLcajwP0
古泉が呆れ顔で聞いてくる。いや、なんか会話したきがするが頭がくらくらして覚えてない。うーいてー。

すでに三人娘は坂を下っている。

くそ、お前も見たはずなのになんで俺だけ殴られるんだ?見ただろ?

「ええ、眼福でした」

このやろう、お前は帰りに犬のくそでも踏め。

「遠慮しておきます」

しかしハルヒは何て言ったんだ?

「近々わかると思いますよ」

なに?また何か悪巧みでも思いついたのか?死刑になりたくないぞ。

「死刑にはならないと思いますがあなたにとって試練になることは間違いなさそうです」

やけに楽しそうなのと少し憂いを含んだ表情を浮かべながら古泉がハンサム顔で空を見上げる。

「僕から超能力が消えるのも遠くないのかもしれません。宜しくお願いしますね」

なんのこっちゃ、お前にお願いされてもあまり嬉しくないな。お前の為の俺の頑張りなんぞあまり期待するなよ。

くすりと古泉は笑うとそれ以上何も言わなかった。まったく、何か含んだ笑いだな。




14 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:09:35.42 ID:ICLcajwP0
いつもの分かれ道でいつもの様にそれぞれ別れる。

おーいてて、ハルヒのヤツ思いっきり殴りやがって、くそっ。一人になった途端痛みが増してきた。

目の下を押さえながら歩いていると角を回った途端に現れた人物にぶつかりそうになる。

「え?な、長門?マンションに帰ったんじゃないのか?」

「私の座標位置をずらした」

なに?座標位置とな?もしかしてそれはテレポートというヤツか?お前もう何でもありだな。出来ない事を教えてくれ。

黙って長門は手鏡を俺に手渡した。なんだこれ?

「手鏡」

そりゃ見りゃ分かる。俺に渡した意図を聞きたい。これ長門の私物なのか。意外と古風な趣味をしているな。ちゃんと彫刻で掘ってあるもようが椿の花のがらで

「自分の顔を見て」 はい。

覗き込んで驚く「うぉ、腫れたなぁ」

「あなたが明日もその顔だと、涼宮ハルヒが罪悪感を抱きかねない。治療する。」

そういうと長門は少しひんやりした小さな手で俺の顔を挟み込んで自分の方に引き寄せた。

え?ちょっと長門さん?




15 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:09:55.55 ID:ICLcajwP0
目の下の腫れた所に長門が唇をあてる。うわぁ、柔らかいなぁ。やっぱり長門も息をしてるんだ。顔に超至近距離でかかる吐息がくすぐったい。わーいい匂い。

やばいなんかハルヒの言っていた変な気になりそうだ。

腫れている箇所にそって長門が唇を優しくずらしていく。

動いてゆく唇の質感とさらさらとなでてゆく髪の感覚が挟んだ手はやわらかく息がうわぁうわぁ!なんか色々やばいっすお母さーん!

実際には3秒も無かったのだろうが脳がスパーク寸前の俺にはかなり長く感じた。

「おわり」

そっけなく離れる。

「す、すまないないつも手間をかけさせて」心臓は爆発寸前だ。呼吸も少しならず荒くなっちまったぜ。

「いい」

すっと俺の手元を指差す。

「返して」

あ、あぁすまない。長門に手鏡を返す。

受け取るとそのまま幽霊のように歩き出した長門の背中に慌てて声をかける。

「あ、ありがとうな、長門」




16 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:10:26.82 ID:ICLcajwP0
くるっと長門が振り向いた。

何か言いたそうだな。というか表情を我慢しているのか?あれ?以前にもたしか…この表情の変化は…もしかして。冗談をおっしゃいますか?

「噛んだ方が良かった?」

今ので良いです。

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ぐあー!誰か時間を戻してくれ!

朝比奈さんに頼んで時間遡行をしようか、長門に頼んで関係者全員の記憶を改竄してもらおうか。

しかし頼むときのことをシミュレートしてみるとこれまたアクロバティックに体がよじれる。

「俺が見ていたエッチなサイトの…」ぬおおぉ!羞恥で悶え死ぬ。

よりによってコスプレサイトを閲覧するとは我ながら迂闊すぎる。

恥辱にまみれて死んでしまいそうだ。そうだいっそのこと誰か殺してくんねぇかなぁ。

朝倉の顔が頭の中にフラッシュバック。

生きよっと。

自室のベットの上で部屋着に着替えた後、後悔と恥ずかしさにもんどりうって悶えていると妹がやってきた。




17 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:10:51.68 ID:ICLcajwP0
「キョンくんごはんだよー!何してるのどたんどたん響くよ~」





飯食って一息ついて落ち着いた。我ながら単純だ。さて、気になる事があるぞ。

俺が廊下で待っている時にハルヒはコスプレサイトを見て閉鎖空間を発生させた。

なぜだ?

古泉が言うには閉鎖空間はハルヒがストレスを発散させる為に生み出しているらしい。

つまりハルヒはコスプレサイトを見てストレスを感じたという事だ。

自分では朝比奈さんを着せ替え人形みたいにしてコスプレさせているのにだ。

じゃあ、コスプレに性的な要因が絡んでくると不機嫌になるのか。

いや、それもないな、以前朝比奈さんにきわどいポーズをとらせてその写真をSOS団のHPのトップに載せようとしていたくらいだからな。

うーん、どうにもピンと来ないな。

その時、携帯が鳴った。ディスプレイには古泉と出ている。

「どうした。神人狩りは終わったのか」





18 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:11:10.22 ID:ICLcajwP0
『実はその神人であなたの耳に入れておいた方が良いと思う事がありましてね』

「聞きたくないな」

『まぁそうおっしゃらずに。以前あなたを閉鎖空間にお連れした時に現れた神人は覚えておいでですか?』

「忘れたい記憶だ」

『あの神人にむりやり性別をつけるとしたら男性か女性、どちらです?』

「性別も何ものっぺらぼうのつるぺったんだったろうが」

『ええ、ですからどちらです?』にやにや顔が目に浮かぶようだ。

「とりあえず胸が無かったから、無理矢理判断するなら男だろう」

『今日の神人には胸がありました。それに髪もね』

「どういうことだ?」

『相変わらずののっぺらぼうではあったんですが、明らかに胸のふくらみや体のライン等は女性の特徴を持ってましたよ』

「それで、俺にどうしろというんだ?」

『いいえ、どうも。ただあなたの耳に入れておいた方が後々お役に立つのではないかと思いましてね。僕の独断です』

「………」





19 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:11:37.76 ID:ICLcajwP0
『さて、それでは失礼しますね。そうそう髪ですがポニーテールでしたよ』

言いたい事だけ言って切りやがった。何なんだいったい。神人が女になったところで俺にさほど影響があるとは思えん。

古泉は俺に何を期待しているんだ?俺が神人について考えたところでろくな知恵なんぞ浮かばん。自分で断言してやる。

大体においてハルヒの精神分析は古泉の専売特許だろうが。あいつが嫌になって俺にその役どころを丸投げしようとしているのか?

んなわけない。あの解説好きが自らの役所を手放すとは思えん。

どうにも腑に落ちない古泉の話だったがなんだか考えるのも面倒くさくなってきた。

散々恥ずかしがって悶えたので疲れた。寝る。うーん、いい性格してるぜ俺。

古泉、お前が俺に何を期待しているかはさっぱりだが今日は絶対にこたえる事はなさそうだ。

別に早急に対応しなければいけないことでもないだろう?

-----------------------------------------------------------------------------

「きゃー!!!!!!」

なんだ?!女の悲鳴で飛び起きる!

とたんに正面にいる悲鳴を上げたであろう人物が目に入る。ハルヒ?!

目の前にいるハルヒは慌ててシーツを使い体に巻き付けている。




20 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:11:57.01 ID:ICLcajwP0
巻き付けたシーツを内側からぎゅっと握り、顔だけ出している。なんちゅう格好だ。おでんの巾着みたいだぞ。

「ちょっと!隠しなさいよ!!」ハルヒが真っ赤になって視線をそらす。

自分を見下ろして驚いた。パンツだけしか身に着けていない。うわわ!

しかし隠せといわれてもシーツはハルヒが包まってるし他に着るものは…。

…ここはどこだ?

閉鎖空間…なのか?いや、部屋だ。丸い部屋だ。しかも天井はドーム状になっている。言ってみれば閉鎖空間型の部屋だ。

大きさは閉鎖空間ほどではない。学校の教室4つ分くらいの広さだろうか。部屋にしてみたら大きい部類だな。

壁も床も天井もうすいピンク色の毛足が長い絨毯が敷き詰められ覆われている。明かりは天井全体が光っているようで目に付く光源はない。

そして何より他には何も無い。ドアも窓も換気口すらもない。出ることも入ることもできなさそうな部屋だ。

シーツが一枚あるだけでそれはハルヒが今使っている。

室温は暖かいのでパンツだけでも体が冷える事は無いのだが、いかんせん身の置き所が無い。

周囲の状況を確認して座り込む。お、この絨毯肌触りが良いな、うん、すごくいい。そのままごろんと上を向いて寝転ぶ。

うん、気持ちいいぞ。我ながら妙に落ち着いていることに呆れてしまう。

さて、どうしようか。するするとハルヒが目線をあさっての方向に向けながらシーツを引きずってきた。




21 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:12:19.51 ID:ICLcajwP0
「ねぇ、ここどこなの?」わからん、俺が聞きたい。

「あたし前にもこんなことあったの。というか夢を見たことがあるのよ。」

「その時はあんたと二人で夜の学校に閉じ込められて青い巨人が出てきてすごくわくわくしたわ」

「でもキョンったら元に戻ろうとか言って…」言いよどんだ。

うむ、それ以上言及しないでくれ。

ハルヒは俺の頭の横に背中を向けて座り込む。

そのときシーツがふわりと持ち上がって中が見えた。予想はしてたがハルヒも下着だけだった。

ピンク地の花柄がちりばめてありふちにはその花柄の花びらをかたどったレースが編み込まれてある。部屋の色とよくマッチしているな。

そしてそのままシーツは俺も一緒に覆う。

つまりシーツの中に入ってしまった。のだがハルヒは俺の状態に気がついていないようだ。

「おいハルヒ」

「何よ」まだ気づいていないらしい。

「見えてるぞ」

後ろを向いたのだろう。程よくくびれたウエストと健康的な背中がよじれるのが見える。とたんに跳ね上がるように離れた。




22 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:12:39.10 ID:ICLcajwP0
「な、な、な、な!」真っ赤になって絶句して俺を踏み潰そうと足を上げた。

きれいに伸びた脚がシーツを割って持ち上がる。慌てて避けようとした時、割れたシーツの奥が見えて目どころか意識も一緒に奪われる。

避ける動作がピタリと止まってしまった。

ハルヒが俺の視線に気がついてさっと体を隠す。俺は下着姿を下から見上げたことで恥ずかしくなってようやく視線をそらす。

「はぁ…」

ハルヒが立ったままため息をついた。

「あんたそんな格好で寒くないの?」おかげさまで寒くは無いな。

「寒いって言いなさいよ」なに?

「寒くないの?」





「…さむい」

「ほ、ほらっ仕方ないわね!」ハルヒがバッとシーツを広げた。一瞬、女神という言葉が浮かんだ。

恥ずかしげに膝をこすり合わせて怒ったような顔で目を閉じ横を向いて両腕を広げている。




24 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:13:00.76 ID:ICLcajwP0
女性らしい女性しか持ち得ない体の曲線を正面から見せられて俺がたじろいだ。

「いや、ハルヒ…あのだな…」

「寒いんでしょ」頬どころか肌が少し上気してないか?

「は、恥ずかしいんだから早く!」言われて飛び起きる。

向き合ったはいいのだがどうにも近寄りがたい。その…きれい過ぎて。

「もぅ!」キッと俺を見据えるとたたっと走りこんで優しく体当たりしてきた。反射的にハルヒの体を抱き止める。

ハルヒが両腕で俺を抱きしめるようにシーツで包み込む。

結果としてお互い抱きしめ合う様な格好になるわけで…しかもお互いほぼ裸体。

肌と肌が触れ合う面積がこれまでと段違いだ。ハルヒの香りが一瞬遅れてふわりと鼻腔に届いた。なんか落ち着く。

しばらく、と言ってもどれくらいだろう。俺はハルヒを感じていた。

黒い髪の毛と頬に触れるそのつややかさ。

ふれあっている箇所の温度と肌のきめの細やかさ。

それにふくらみが俺のあばら辺りを押している。

「ねぇ…キョン…」小さな声で俺を呼ぶ。




28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/21(水) 16:25:05.42 ID:/9MWN7hN0
は・・・は・・・セックシュン・・・・




29 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 16:25:15.65 ID:ICLcajwP0
ごめん。ここまでしか書きためてない。

深夜にでも続き書いて投下するよ。




30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/21(水) 16:26:40.90 ID:/9MWN7hN0
>>29
お前は風邪をばらまく悪魔のような奴だ

必ず今日中に投下しろよ!いいな!別に楽しみってわけじゃないけど待ってるからな!




33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/21(水) 16:29:29.02 ID:yYgj2OgCO
>>29
おk

俺が風邪ひく前に帰ってきてくれよ。
こんな恰好じゃコンビニにもいけないんだから




47 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 19:23:57.60 ID:ICLcajwP0
少し体を離して俺を見上げる瞳は潤んでいて頬は桜色に染まっている。

なんて綺麗な瞳で俺を見つめるんだ…

『ハルにゃんならおいたしてもいいにょろよ』

うおぉ!俺はなんつータイミングで思いだすんだ!

恥ずかしい事にどうしたら良いか分からん。呼ばれて返事をする語彙すら消滅している。

下着姿の同級生に抱きつかれて潤んだ瞳で見つめられながら呼ばれた時には何て返事すれば良いんだ?

俺はただハルヒの光り輝く黒曜石の様な瞳を見つめ返した。それしかできなかった。

ハルヒはすっとその綺麗な瞳を閉じた。あ、もうちょっと見ていたかったかな…。

そしてトン、と俺の胸板におでこをあててきた。そのまま頬を俺の胸にあてる。

俺はどんな顔していたんだ?ハルヒは今どんな顔しているんだ?




48 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 19:24:38.95 ID:ICLcajwP0
「…くすっ」あれ?ハルヒ笑った?

「すごいドキドキしてるわね」いやもう色々と脳内物質が分泌されているからな。

ぱさっ…

ハルヒがシーツを離した。けど俺の事は離さない。俺も腕をほどかない。

もはやお互い意識的に抱き合っている状態である。

ハルヒが俺を離した。そして俺の腕の中でくるりと180度回る。ハルヒが俺に背中をむけてもたれかかってくる。

思わずほどこうとした俺の腕にハルヒが手を添えた。そしてそっと自分の体に巻き付ける。

ハルヒのむき出しになった肌に俺の手から腕から全てが触れる。

暖かい、そしてなんて柔らかいんだ。改めて男と女の違いを思い知らされる。

何が何だか分からなくなる。もっとハルヒを感じたくて俺は自分の意志でハルヒを抱きしめた。




49 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/21(水) 19:25:18.69 ID:ICLcajwP0
ぎゅっ…

途端ハルヒが俺の腕をほどいてすたすたと歩き出す。

そしてくるっと振り返った。

「ほ、褒めなさい」両手をグーにして腰にあてて片足に体重をかけたポーズをとる。

「綺麗だな」意外にも思っている事がすんなり言えた。

「なっ!」ハルヒが両手で自分を抱きしめる。

「それにかわいい」感情が素直に言葉になった。

「っ!」今度は頬に両手をあてる。

そこまで言って俺の語彙は底をついた。言った内容に自分でも猛烈に照れる。ぐおぉ。

言われた方はもっと恥ずかしかったらしい。もじもじしていたがこちらに向かって走ってきた。




71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/21(水) 21:31:47.73 ID:27Yp23pNO
ハルヒって男子がいても構わず服脱ぐ奴だと思っていたが…




72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/21(水) 21:38:37.37 ID:+QQLQAH50
キョンの前では別 それが憂鬱の後半以降の流れ




117 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 04:43:17.21 ID:dR7RNs4F0
一瞬俺に飛び込んで来てくれるのかと期待したのだが違った。

まるでホームスチールするごとく頭から俺の後ろに落ちていたシーツの下に飛び込んだ。

が、シーツに隠れたのは上半身だけで下半身は未だにシーツに潜ろうとジタバタしている。

俺からしてみたらお尻がシーツから飛び出してふりふりしているわけだ。もう目のやり場に困るとはこの事だろうね。

いや、さっきから困ってはいるのだが。

仕方がない、シーツの端をつかんでふわりと綺麗なお尻にかけてやる。その時に俺も一緒にシーツの中に入った。

ごそごそと上にほふく前進。ハルヒの顔の横に到着。

白い光の中でお互い見つめ合う。沈黙の妖精が通り過ぎていく。

「ま、枕が欲しいわ」ふいにハルヒが言う。

シーツを丸めようか?





118 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 04:43:57.54 ID:dR7RNs4F0
「やだ」

じゃ、我慢しろ。

「やだ」

どうしろと言うんだ?

ポンポン ハルヒが自分の頭があった場所を軽く叩く。

ビスケットが2つ?

「もぉ!団員なら団長の為に体を張りなさい!」

ハルヒの意図に気がついたがそれは恥ずかしいぞ。しかし気づかないふりも唐変木すぎる。かといって俺に選択肢がある様な状況ではない気がする。

どうにでもなれ、と左腕をハルヒの頭の下に入れてやる。

もぞもぞとハルヒが俺に近寄って来て体を密着させて頭を腕に乗せた。




119 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 04:44:34.55 ID:dR7RNs4F0
髪がさらさらと流れ落ちる。俺は右手をハルヒの上に置いた。

一瞬ハルヒの体が硬直した。しかしゆっくりと力が抜けていく。安心した様な息をハルヒが静かにはいた。

ハルヒがちろっと俺を見上げた。がすぐに顔をうずめた。

顔のすぐ下にハルヒの頭がある。当たり前のように髪の中に鼻をうずめてしまった。

ハルヒの匂いだ。少し甘くてそして、なぜこんなに落ち着くんだろう。

目を閉じて肺一杯にハルヒを吸い込んでみる。あぁこのままでもいいな。ぼんやりそんな事を思った。

ハルヒの呼吸が寝息になってきた。俺もそれにつられるように眠気がおそってくる。

古泉の言っていた女の神人がなぜか頭をよぎる。黄色いリボンが揺れる。花柄の下着。美しい曲線。断片的なイメージが浮かんでは消える。

眠りにつく前にもう一度ハルヒを抱きしめたい。俺は両手でハルヒを抱きしめながら眠りに落ちていった。

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120 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 04:45:04.92 ID:dR7RNs4F0
部屋が明るくなってきた。朝か…。ぼやけた意識で思う。

そして、もぞもぞと手を伸ばして柔らかくて暖かいハルヒを探す。ハルヒをさがす?!

がばっ!一気に意識が覚醒状態になる。

俺の部屋だ。

足元でシャミセンがぐぐーっと伸びをしてまた丸まった。

「おい、シャミセン、俺は昨日の夜ずっとここにいたか?」

耳をぴくぴくさせただけでもちろん返事はしなかった。

シャミセンの代わりに目覚まし時計がアラームを鳴らしだした。今日はすんなりベットから起きられそうだな。

しかしまだハルヒの重さと色々な感触が体に張り付いている。というか体が忘れられない。きっちり記憶している。

潤んで輝く瞳、健康的な背中、女らしい曲線、腕枕したときの重み、髪の匂い、抱きしめて感じた暖かさ、そしてやわらかさ。




121 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 04:45:30.10 ID:dR7RNs4F0
『は、恥ずかしいんだから早く!』

妄想の中のハルヒが再び下着姿で腕を広げて俺を呼んでいる。思わずそのハルヒを抱きしめようと俺から近寄る。

「あれー?キョンくんが一人で起きてる。えらいねーシャミ」

ベットの上で飛び上がるほど驚いた。ぐがげぎが!

「あはははー!ぐがげぎが♪ぐーぅがぁげぇぎぃがぁがぁがぁ♪」妹がシャミセンを抱えて部屋を出て行った。

うぁー。まだ動悸が治まらん。やれやれ。

とりあえず顔を洗い歯を磨く。鏡を覗いたら妙な顔をした自分がいた。

てめぇ、少しばかりにやけてないか?

朝飯を食っていつものごとく学校へ向かう。

歩きながら考える。まるでギリシャの哲学者のようだが内容は下世話なもんだ。




122 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 04:46:04.65 ID:dR7RNs4F0
夕べの記憶は夢…ではないだろうな。

現実だとしたらあそこはどこだったんだ?閉鎖空間とも違っていたし。ハルヒの意図はなんだったんだ?

なんにせよいつものごとく巻き込まれたことには間違いない。巻き込まれた本人が現状を客観視しようとしても難しかろう。

説明してくれそうな人物には心当たりがあるし放課後部室で聞けば良いだろう。

哲学者の真似はやめだ。なによりこの坂をのぼりながら脳みそにまで負担をかけるのは心身ともに疲弊する。

教室について自分の席に着く。ハルヒはもう座っていた。

憂いた顔で頬杖をついて窓の外を見ている。

なんというか、自然と頭の中に昨日の下着姿と目の前のハルヒを重ね合わせてしまう。

無言でいるのも自分で意識しているのを認めるようでくやしい。

「よぉ、眠れなかったのか」





134 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 08:10:40.41 ID:dR7RNs4F0
「え?眠れたわよ。あんたに…」

目線が重なった途端、ぼぉんという擬音が聞こえそうな勢いでハルヒが赤くなる。つられてこっちも昨日の記憶がさらにまざまざとよみがえる。

「なんでもない!」

やはりハルヒも昨日の記憶はあるようだ。幸いまた夢だと思ってくれているようだから俺が意識しないようにしなければ。

昼休み、説明してくれそうな人物その1が向こうから近づいてきた。古泉がにこやかに片手を挙げる。

「少しお時間をいただいて良いですか?」周りの一部の女子が古泉を見て浮かれたような声でささやきあいだす。

「場所を変えよう」俺は席を立ち教室を出た。

屋上までつづく階段の踊り場まで来る。かつてハルヒにネクタイをひっぱられながらSOS団創設の協力を強制させられた場所だ。

なつかしいな。んなことはともかく。

「ありゃなんだ?」





135 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 08:11:17.09 ID:dR7RNs4F0
「その質問は僕がしようと思っていたところですよ」くすりと古泉が笑う。

ということはやはり閉鎖空間じゃなかったんだな?

「閉鎖空間の別バージョンとでもいいましょうか。とにかくいつものストレス発散の閉鎖空間ではありませんでした」

確かに灰色でもなくて無機質な印象もなかったな。神人も…まぁいなかったし。

そういや赤い光を見なかったな…。

…!

「お前、中にいたのか?!」思わず語気が強まる。

「いいえ、入ってません」ほっとする。

「侵入しようと試みてはいたんですがね」なに?

「以前涼宮さんとあなたが閉鎖空間に閉じ込められたというか、アダムとイヴになった時、僕は仲間の全ての力を借りてやっともぐりこみました」




136 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 08:11:47.73 ID:dR7RNs4F0
そんなことを言っていたな。アダムとイヴは余計だ。

「失礼。しかし昨夜の閉鎖空間は違っていました。どんなことをしても侵入できなかったのです」

そりゃよかった。

よくよく考えたらあんな状態を他人にみられるのはとてもじゃないが恥ずかしい、いや腹ただしい。

ん?なぜ俺は腹が立つ?ハルヒの下着姿を誰かに見られると思ったら腹が立ったぞ。

ここは恥ずかしいの感情だけが立つところじゃないのか?

「あの中でなにがあったんですか?」古泉が聞いてくる。

ないない何もない、特に何もない。

ハルヒと二人だったのは認めるが特別なことは何もなかったぞ。そう、何もなかった。

最初驚いて、適当にしゃべって、寝たら元通りになってただけだ。




137 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 08:12:45.49 ID:dR7RNs4F0
俺の超簡易な説明をそれでも興味深げに聞いていた古泉は少し考えた。

「神人を消すと閉鎖空間も消滅することはご存知ですよね」

ああ、ご存知だ。

「あの閉鎖空間はいつものとは違い大きくなりません。そしてお話を伺うに神人も中には存在しない」

ああ、神人はいなかった。ま、言う必要もないから黙っているが、…女神はいたぞ。

「なので閉鎖空間を消滅させる方法が分かりません」

別に大きくならないなら害はないんじゃないか?そのままにしておけよ。

なぜか俺はあの空間がとても大事な気がしてつい擁護にまわる。

俺の態度を見て古泉がしたり顔でにっこりする。何をさとりやがった?

「危険がないと判断できればそのままでも構わないと僕も思います。しかし」




138 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 08:13:19.28 ID:dR7RNs4F0
しかし?

「中の状態を確認しないことにはその判断は出来かねる、と考える上の人間もいるんです」

頭のかたい上司だな。害のないものは放っておけよ。

パンドラの箱をしらんのか?藪をつついて蛇どころか鬼が出てきたような史実は数多く存在するぞ。

「まったくそのとおりです。ですから中の様子を安全に確認するには戻ってきた人物に聞くことです。もちろんその人物が信用に値する人格の持ち主であることは大前提です。そして私はあなたがそうだと思っているんですがね」

持ち上げてもこれ以上の情報は提供できないぜ。それにお前の言う人格者はお人よしと同義に聞こえる。

次には、なのでどんな空間だったか教えてくれませんか?とでも言いそうだな。

「なのでどんな空間だったかおしえてくれませんか?」にこやかに復唱するな。

とにかくあれには危険はない、お前の頭の固い上司にそういっておけ。

話は終わりだ。俺は階段を降りはじめた。廊下での別れ際、古泉がこう言った。




139 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 08:13:41.04 ID:dR7RNs4F0
「あの空間はいったいいつ消滅するんでしょうね。それじゃ」

知るかそんなこと。何より今俺はあの空間がとても大事にした方がいいような気がしている。いや、大事にしたい。

何より誰にも迷惑をかけていないんだ。そっとしておいてくれ。

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放課後、やっぱり自然と部室に向かう。何なんだろうね。習慣になっちまってる。

今日はハルヒは掃除当番なので少し遅れてくるだろう。

部室の前に立ちドアをノックする。

「はぁい、どうぞ」朝比奈さんが返事をしてくれた。

入ると昨日とは違い既に古泉も長門もいた。

「今お茶入れますね」メイド服の朝比奈さんがぱたぱたとお茶の用意をしてくれた。




164 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 14:33:13.94 ID:H5oAZNUQ0
よかった。昨日の今日だから着替えてなかったら変に意識してしまうところだった。着替えてくれてありがとう朝比奈さん。カチューシャがよくお似合いです。

ことん、朝比奈さんがにっこりしながら俺の前にお茶を置いてくれた。湯飲みから昇る湯気に心が温まる。

ぱたん。長門が本を閉じた。

部活終了の合図…じゃ、無いよな。

小さな音なのに何故か室内に緊張した空気が漂う。

朝比奈さんは小動物のごとく敏感にその空気を感じ取ってお盆を抱きしめ壁際にすすすっと引いた。あら壁の華。

古泉は完全に傍観者を決め込んでやがる。にやけ顔がむかつく。

長門のダイヤモンドダストの目が正面から俺を見つめた。体温が下がる気がする。

説明してくれそうな人物その2だが、こうも正面からこられて正直腰が引けてます。

「本日未明 午前1時32分18秒から1時間26分46秒の間、涼宮ハルヒとあなたの存在を確認できなくなっていた」




165 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 14:33:55.01 ID:H5oAZNUQ0
ニュースを読み上げるみたいに言わないでくれ。

「昨晩できた閉鎖空間の内部を観察することが情報統合思念体にも不可能だった」

なに?神と言って差し支えないような長門の親玉にも侵入できなかったのか。

「現状ではあの空間の内部情報を持ち帰ることができるのは涼宮ハルヒとあなただけ」

見られていないのをほっとするのと同時に宇宙の中で俺とハルヒしか入れないあの部屋がますます貴重なものに感じる。

「どうやら本当に完全な不可侵空間のようですね」古泉がにこにこしている。

「情報統合思念体はあの空間の内部情報を手に入れたがっている」うげ。なんつーピーピングトムだ。

「私という固体もあの不可侵空間の内部を知りたいと思っている」

こら長門、女の子がはしたないぞっ。

「………」





166 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 14:34:28.67 ID:H5oAZNUQ0
いや、特にたいした空間じゃないぞ、ほんとに。こら古泉なにを笑っている。

俺は閉鎖空間、というかあの丸い部屋の様子を、部屋の様子だけを、古泉にしたよりも少し詳しくわたわたしながら長門に伝えた。

「ふわ~不思議なお部屋ですね~」お盆を抱きしめたまま俺たちの話を聞き入っていた朝比奈さんがため息とともに感想を述べる。

いや、興味を持つようなもんでもないですよ。絨毯の肌触りは秀逸でしたが、観光名所になりそうな特徴は皆無でしたから。

というわけだ。納得してくれたか? ちら。

ダイヤモンドダストがまだこっちをみてるよ~。冷や汗が背中を伝わる。

「内部での涼宮ハルヒとあなたの行動を知りたい」ぐぼはっ!

言わなければいけないか?

「あなたに言う義務はない。あなたはあなたの思う通りに行動してよい」

お言葉に甘えさせていただきます。言えません。




167 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 14:34:52.07 ID:H5oAZNUQ0
「残念です」古泉お前はだまってろ。

「あなたの言う丸い部屋はまだ存在している」そうなのか?古泉のほうを見るとにこやかに頷いた。

しかし存在していてもなにも問題はないだろう?部屋が悪さをするわけではないだろうに。

「場所に問題がある、出現した場所が地球で言うエネルギーが飽和状態になっている場所だった」

なんだ?火山の噴火口とかか?

「ここですよ」古泉の人差し指が垂直に下をさしている。

「今まで飽和状態だったところの位相空間に突然出現したんです。出現した閉鎖空間の中に今まであったエネルギーが流れ込めればそれ程でもなかったんでしょうが、いかんせん外からのありとあらゆる侵入を絶対に許さない閉鎖空間でした」

古泉の説明を聞いて、お湯がいっぱいの風呂に飛び込む絵が浮かんだ。ざばー!

で、どうなるんだ?

「あふれ出したエネルギーが予測不可能な振る舞いをこちらの位相でする可能性がある」事実を冷静に長門が言う。




183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/22(木) 16:40:02.96 ID:5SxfFfCw0
スペース空けるんなら一行づつじゃなくて、セリフのときだけにするとか工夫したらどうだろう?
ぶっちゃけ読みにくいぜ。




195 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 18:25:47.18 ID:H5oAZNUQ0
>>183
ごめん。書き方変えると書きにくくなってしまう。

このままいかせて。




196 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 18:26:33.79 ID:H5oAZNUQ0
具体的には?

「わからない」背筋が凍った。長門にわからないと言われると絶望を味わえるな。

ニヒリストを気取っているヤツは長門の前に10秒も立たせればコロリと宗旨替えするだろう。

古泉、お前昼休みにこんな事一言も言わなかったな。

「実体験に勝る言葉はありません。現実がどのように歪められているかあなたに直接経験していただこうと思いまして」様になる肩のすくめ方。

「そうすれば閉鎖空間を閉じようとする意図にも少しはご尽力をいただけるかと」にこり。

お前はあの部屋が消えなくてもいいと言っていただろうが。

「ええ、危険が無いと判断できればという条件付きですけどね」政治家の答弁みたいな受け答えだな。お前が立候補しても俺の投票は期待するなよ。

「ちなみにそのお茶」俺の未来への宣言をさらりとかわして古泉が俺の前に置いてある湯のみを指差す。

「飲んでみて下さい」




197 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 18:27:04.31 ID:H5oAZNUQ0


頬をたらりと汗が伝わる。

今までの前振りを考えるとどうしてもこのお茶が普通であるとは思えない。

お茶を煎れてくれた朝比奈さんを見る。このお茶になにか細工は…

ふるふる。お盆を抱きしめながら巻き毛が左右に揺れる。

「い、いえ、私は何も、普通にいつも通り煎れただけです。特にこれと言って。あの、本当です」

いや、すみません、朝比奈さんを疑ったわけではないんです。ありがたく頂きます。

色、普通。

匂い、特に変とも思わない。

手に取る。覚悟を決めて一口含む。

…味、うまい。いつもの朝比奈印の味がいたします。




198 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 18:27:38.96 ID:H5oAZNUQ0
ただし、…不自然に温度が高い。

煎れてもらってそれなりに時間が経っているのに煎れたての様な湯気を上げている。

「如何です?」古泉が晴れやかに聞いてきた。

結構な御点前で。

「お粗末様です」朝比奈さんが慌ててぺこりと頭を下げる。

「このようにエネルギー保存の法則が崩れかけています。今はこちら側の空間ではこの部室だけですがそのうち影響は校舎の外まで波及すると思われます」

文字通りの茶番を朝比奈さんとやっている場合ではない気がしてきた。朝比奈さんは大まじめに受け答えしてくれたみたいだが。

「長門さん、最終的にはどのくらいまでこの影響は広がりますか?」

「この街の郊外付近まで波及すると思われる」やぁ日本全体とかじゃなくてよかったよかった。

「長門さんは先ほどからお茶に口をつけていませんね。何か問題でも?」




199 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 18:28:05.26 ID:H5oAZNUQ0
古泉の言葉に朝比奈さんがびくっとする。

「あ、あの、何か不手際がありましたか?」おずおずと朝比奈さんが聞く。

長門は自分の前に置かれていた湯のみを持つと中が見えるように朝比奈さんに傾けてみせた。

朝比奈さんが口に手をあてて悲鳴を押さえ込んだ。

必然的にお盆が床に落ちる。からからからから…

あれだけ傾けたら中身がこぼれそうなものだが、なぜだ?

長門がすーっと腕を動かして俺にも中身が見えるようにしてくれた。

見事に凍っていた。おいおい、冷気がこぼれているぞ、そのお茶何度なんだ?

「マイナス183.5度」

再び朝比奈さんが飛び上がって後ざする。




204 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/22(木) 18:41:10.86 ID:H5oAZNUQ0
床を見つめて泣きそうな顔。潤んだ大きな瞳の見つめる先には先ほど落としたお盆が…まだ回っている。

からからからからからからからからからからからから…

止まりそうで止まらない。おいおいおい、明らかにおかしいぞこれは。自分が培ってきた常識とやらがぐらぐらと揺れ出すのがわかる。

古泉がお盆に近づいてひょいと持ち上げた。

「今、この部屋でなら簡単に永久機関が実現できそうですね」さすがの古泉でも浮かんでくる苦笑を押さえる事が出来ないようだ。

お盆をくるりと回すと朝比奈さんに手渡す。おっかなびっくりに朝比奈さんが受け取った。

「あ、あの、こんな状態の時に涼宮さんが部室に入って来たらどうなるんですか?」朝比奈さんがおそるおそる疑問を口にする。

「予測不可能」長門が宣言する。

どっかーん!

部室のドアがぶっ飛びそうなほど勢いよく開いた。長門を除く全員の心臓が跳ね上がったと思われる。少なくとも俺のは飛び上がったぞ。




211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/22(木) 19:06:29.62 ID:VxvFy8zZ0
俺もう、相手いらないから一人でもいいから
その空間に入りたい。ずっと。




255 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 15:41:03.20 ID:lFbbKj+y0
「おっまったせー!!」ハルヒ!

待ってねぇ!というかぶっちゃけ今は部室に来て欲しくなかったぞ。

しかもなんつータイミングで入ってくるんだよ。長門の宣言直後だ。文字通り何が起こるか分からん。

って!もう起きてるー!!!!

朝比奈さんが硬直する。

ハルヒが自分の席に向かって歩いてゆく。その通りすぎた空間に言葉にできない様な魑魅魍魎が浮かんでは消え、浮かんでは消えている。

筆舌に尽くしがたいぞこれは。かろうじて認識できるものでも、くじら、カーペット、手、犬の首、巨大なろうそく、下駄箱、救急車、無茶苦茶だ。

全く何の脈絡もなく無秩序にありとあらゆるものがいびつな形で互いに混じり合い、喰らい合いながら空中に飛び出しては溶けてゆく。

しかも全く音を立てない。誰かが見た酷い悪夢を何種類もぐたぐたに混ぜ合わせて無理矢理見せられているようだ。

ハルヒ自身は自分の真後ろの事なので全く気がついていない。いや、これは気がついてもらっては困るのだが。




256 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 15:41:29.05 ID:lFbbKj+y0
しかしこれには度肝を抜かされた。俺だけではなくさすがに古泉もそうらしくいつものスマイルも貼り付けたようだ。

ハルヒが椅子に座る。途端に悪夢が覚めたように百鬼夜行はなりを潜めた。

どうやらハルヒが移動すると現れるようだな。ほっとする。じっとしていろよハルヒ。

ハルヒがPCの電源を入れた。一瞬でPCが立ち上がる。

「あら?今日は早いわね」PC空気読め!ひいた冷や汗がまた噴出す。

「キョンも見習いなさい。あたしは打てば響く様な団員が好きよ!」

無機物を見習えと言われても素直にうなずく気にならんわい。が、今は状況が状況だ。素直に首を縦に振っておく。

「みくるちゃんお茶」ほっ…、PCの異常スペックアップに疑問をもたないでくれた。密かに胸を撫で下ろす。

「あ、はい!」魑魅魍魎に完全に骨抜きにされた朝比奈さんがハルヒの言葉にぴょこんと飛び上がってお茶を煎れる。

そしてお盆に乗せて歩き出そうとして立ち止まった。俺、古泉、長門の3人がお盆に乗っている湯のみを注目していたからだ。




257 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 15:41:52.89 ID:lFbbKj+y0
朝比奈さんに目配せ。(大丈夫ですか?変なものになってませんか?)

珍しくアイコンタクトが通じたようだ。こくこく。壊れた人形のようにぎくしゃくとうなずいてくれた。

朝比奈さんがゆっくり湯飲みの中を確認。うわぁ泣きそうな顔になっちゃった。

あぶなっかしく片手でお盆を持ち、人差し指を俺に向けてくるくると回した。

田舎のトンボとりを思いだすな。いや、どうでもいい。

どうやら湯のみの中のお茶の渦が止まらないとみた。

どうする?長門を見る。

ナノ単位でうなずいた。大丈夫という意味にとるぞ。いいな?

古泉を見てみる。アルカイックスマイル。役に立たんやつめ。

朝比奈さんにうなずき返す。(大丈夫です。そのまま持っていってください)




258 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 15:42:24.69 ID:lFbbKj+y0
メイド服の未来人は良いんですか!?とばかりに大きな目を丸くする。

朝比奈さんがものすごく緊張しているのが手に取るように分かる。お願いします、こぼさないでくださいよ。

回り続けるお茶が湯飲みの外に出たらどんな振る舞いをするのか想像もできない。したくない。

本日この場においてはどじっこメイドは封印してください。

そんな周囲の心配なぞ露知らず、ハルヒはネットサーフィンをしている。

クリックすると一瞬で画面が表示されている。完全にストレスゼロの表示速度。さぞかし快適なネット環境だろう。

「おおおお待たせしました」

ハルヒの机の上に恐る恐る朝比奈さんが湯飲みを置く。ちゃぽん。

ゆっくり置いたにもかかわらず、お茶が跳ね上がる。ちゃぽん。また跳ね上がる。

朝比奈さんがまたこっちを見る。口をぱくぱくさせながら顔をふるふると左右に振る。




294 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 20:47:00.24 ID:lFbbKj+y0
言わんとする事は正確に分かります。

(わ、私もうだめです)

いくら何でもお茶が勝手に跳ねるのはまずすぎる。朝比奈さんに下がってとジェスチャーしながら俺はハルヒの湯飲みを取ろうと立ち上がった。

が遅かった!ハルヒが湯飲みを持ってしまった!

ぐびぐび。とん。

大丈夫か?気がついたか?固唾を呑む。

「明日の市内パトロールだけどこの方法を取り入れてみようと思うの」

ハルヒがディスプレイを指差す。

「良いんじゃないか」お茶が気になってろくに見ずもせずに返事をしてしまった。

「へぇ、珍しいわね。あんたがすんなり賛成するなんて」




295 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 20:47:25.46 ID:lFbbKj+y0
ディスプレイを確認するふりをして湯飲みを覗き込む。飲みきっている。気づかれなかったみたいだ。

安堵しながら改めてディスプレイを見てみる。

なんだこれは?方違え?

「簡単に言うと、どこかに向かう時それが悪い方向だったらいったん別の場所に行きあらためて最初の目的地へ向かうのよ」

おいおい、陰陽師のブームはもう去ってるぞ。

「何言ってんの?ブームの問題じゃないわ。我がSOS団は現代はもちろん過去から未来までもの知恵を集結して活動するの!」

ハルヒが立ち上がって俺に指をつきつけながら言う。

「考えてみたら不思議なものが常識的な行動をとるわけないのよ。不思議なものは不思議な行動をするから不思議なの。」

説得力がある様な無いような理屈だな。

「いいキョン?まっすぐな道をまっすぐ歩くのは不思議じゃないの」




296 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 20:47:49.34 ID:lFbbKj+y0
そりゃそうだ。

「まっすぐな道を横切ったり昇ったりひっくり返ったり消えたりするのが不思議なものよ。簡単でしょ」

完璧な理論。まいったか。と言わんばかりのハルヒ。

両手をぐーにして腰に手をあて片足に体重をかけて…あれ、このポーズは丸い部屋で…

!!!!!!!

ハルヒの後ろに俺が現れた!!しかも裸!!!腰から下は透明になって消えているから幸いにして見えない。いや、何が幸いなんだ、いや幸いだろう。

すーっとハルヒの背中に向こうの俺が近づく。

志村うしろー!

違う!そこの俺、自重しろ!

向こうの俺が、魂の底から愛しく想う人を守るように優しくハルヒを抱きしめようとする。




297 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 20:48:12.33 ID:lFbbKj+y0
まずい!ハルヒの視界に入る!

しかし視界に入る寸前、向こうの俺はハルヒを抱きしめる直前で空中に溶けた。

「ん…!」ハルヒが声を出す。

ハルヒが腰にあてていた手を胸の前に持ってきた。右手を胸の上で握り、左手で押さえている。

?!見えなくなっただけで抱きしめられたのか?くそっ!…あれ?なぜ怒る?

ハルヒが俺をまっすぐ見つめてきた。あ、閉鎖空間で見せてくれた輝く黒曜石の瞳…。そして何かを確かめるように後ろを振り返る。

また、俺を見る。そして振り返る。

俺を探しているのか?

ハルヒを安心させたい。

他の事は頭から綺麗にすっとんだ。大丈夫だ、俺はここにいるぞ。ただハルヒへの想いに突き動かされて俺は一歩ハルヒに近づいた。




298 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 20:48:33.48 ID:lFbbKj+y0
はっとしたようにハルヒが俺を見つめてくる。あの時と同じ瞳だ…。見とれた。意識がふらりとした。俺の中で周りの景色がゆがむ。

違う!実際に歪んでる!



丸い部屋のなかだ!いや、部室に戻って来ている。

一瞬だが確かにあの丸い部屋に移動した。振り返り朝比奈さんと古泉の表情を確認する。確信。部員全員で一瞬だったが移動したんだ。

カメラのフラッシュが光る位の時間だったが移動したのは確実だ。まずいぞ、ハルヒをどうやってごまかす?

ぱたん。

長門が本を閉じた。

「じゃ、明日は駅前に9時集合よ!遅れたら罰金だからね!」

え?いいのか?今の現象にハルヒがつっこまない。正直つっこまれたら困るんだが。




299 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 20:48:59.32 ID:lFbbKj+y0
「今までは探すルートを決めてなかったけど、明日はあたしがルートを決めてくるわ。その通りに動けば必ず不思議なものは見つかるはずよ!」

まるで今の事が無かったように振る舞っている。不思議な事は今ここであったろうに。

まぁ疑問に思わないのであれはそれでいい。しかし…なぜだ?

「あ、あ、あの、じゃ、じゃぁお着替えしますね」朝比奈さんがまだ驚きから立ち直れていない顔で言った。

俺と古泉はとにかく回れ右をした。

廊下に出てドアを閉める。

「見たか?」

「はい、おっしゃっていた丸い部屋ですね」

「ハルヒはなぜ気がつかないふりをしたんだ?」

「あの完全不可侵空間は涼宮さんが望んだからできたものです」




301 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 20:49:22.80 ID:lFbbKj+y0
それは言われるまでもないぞ。

「最も注目すべき特徴は外からの侵入を一切許さないということです」

長門の親玉すら不可能だったらしいからな。

「つまり誰からも見られない場所。見せたくない場所。涼宮さんにとってあそこは秘密にしておきたい場所なんですよ」

それで?

「自分の秘密の場所を指差して『今の見た?!』というのは自分自身に対してあまりにもデリカシーのない態度だと思いますよ」

なるほど、ハルヒが気づかないふりをしたのはわかった。だがそんな秘密にしておきたい場所ならなぜ俺たち全員が一瞬と言えど入れたんだ?

「それは」

がちゃり。

「さっ帰るわよ!」





308 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 21:15:13.64 ID:lFbbKj+y0
いつもの様にハルヒと朝比奈さん、長門、俺と古泉の隊列になって校門をくぐる。

その時、古泉がヤツらしからぬ素早い動きで校舎を振り返った。

古泉の勢いにつられて俺も振り返る。そして古泉の視線の先を追う。

「溢れ出しました」なに?!

SOS団の部室があるあたりから巨大な蒼い手が空に伸び上がる。

「神人の腕です」解説どうも。

古泉と俺はハルヒを確認する。いつも通り朝比奈さんと笑いながら話している。

長門がすっと前に出てハルヒと並んだ。朝比奈さんと長門でハルヒを挟んだ状態だ。

瞬間に理解する。長門はハルヒに後ろを向かせないようにしてくれる!

古泉が自分の手をはっと見る。「能力が使えます」やれ!




309 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/23(金) 21:15:30.25 ID:lFbbKj+y0
そのとき神人の腕が驚く程の速度でSOS団に掴み掛かって来た。

古泉が飛び上がりながら赤い光球に変身し、文字通り光速の動きで頭上まで迫ってきた神人の腕をみじん切りにする。

蒼い光の破片が消えてゆく空中で人間に戻りながら着地。変身してから戻るまで2秒なかったぞ。流石に感嘆。

ごうぅ!

上から風が吹き付けて来た。腕は消滅させても腕が動かした空気は止められなかったらしい。

「きゃっ」「わっ」「…」

頭上からの風という自然界ではありえないであろう現象に前を歩いていた三人は、いや二人は驚きの声を上げていた。

古泉はゆっくり立ち上がり前髪をピンとはねた。もちろんその下にはいつものスマイルを浮かべている。

けーっ格好良いことですこと!

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370 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/24(土) 03:09:15.14 ID:izVncKCt0
いつもの分かれ道で皆と別れる。

俺は角を曲がって最初の電柱にもたれて携帯をとりだした。

別にかけるわけじゃない。

ぶるるる…

誰からかかってきたか確認もせずに出る「公園だな」

『話が早いですね。お願いします』

いつもの公園に行くと古泉、朝比奈さん、長門が待っていた。

「朝比奈さんには校舎を出た時に何があったかは既に伝えてあります」

こくり。朝比奈さんが愛らしくうなずいた。

「さて、問題は明日です」




371 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/24(土) 03:09:35.86 ID:izVncKCt0
市内の不思議探索だな。

「そうです。長門さん、部室からあふれたエネルギーは今どのくらいまで広がりましたか?」

「市街地をすでに覆った。明日の午前9時36分に最大に広がりそこから縮小していく」

「完全に探索の時間と重なりましたね」

ということは?

「今までSOS団の不思議探索は不思議なものを見つけられませんでした。しかし今回ばかりは本当に不思議なものを発見してしまう可能性が出てきました。いえ、可能性が出てきたのではなく、涼宮さんが本気で不思議を望んだんです」

どうするんだ?不思議を発見させるのか?阻止するのか?

「笑って済ませられるような害の無いものであれば僕は問題ないと思いますが、部室で起きたような現象などは発見するべきではないと思います」

どうだ、長門、明日の探索で部室レベルの現象は市街地でも起きるのか?

「エネルギーは均一に分散するわけではない。局所的に集まり偏在する。極大値を取っている場所では部室レベルと同等の現象が起きると予測される」




372 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/24(土) 03:10:05.08 ID:izVncKCt0
じゃ、エネルギーが薄いところを狙って歩けば大丈夫ってことか?

「エネルギーはおおよそ道に沿って移動する」

道っておいおい、歩くからどうしたってエネルギーのあるところに突っ込んでいく事になるじゃないか。

「という事は部室レベルの現象が起きる極大値をとる場所というのは交差点と考えてもいいのですか?」

「いい」

なんてこった。明日は角を曲がる度にびくびくしなきゃならんのか。

………ちょっと待て。ハルヒもそうだが、この街で暮らしている人もあの手の現象を目の当たりにする事になるのか?

「なると思われる」

それまずくないか?おまけにその現象に対処している姿もみられちゃまずいだろう?何とかならないのか。

「交差点となると人の目が多すぎます。神人の出現も狩っている姿も隠すのはほぼ不可能でしょう」




373 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/24(土) 03:10:23.54 ID:izVncKCt0
ハルヒがそれらの騒動を見たら…大喜びするだろうな。

明日でこの世界とお別れか~。ウェルカムトゥワンダーワールド♪

冗談じゃねぇぞ。

「あの…」

今まで成り行きを黙って聞いていたSOS団のマスコットがおずおずと手を挙げた。

俺と古泉と長門の3人に注目され、もじっとする。

「人がいなくなればいいんじゃないでしょうか?」

???????

「長門さん、この街すべての人達に何らかの理由をつけて明日一日だけ街の外にお出かけしてもらう事はできますか?」

珍しく瞬きをしてから長門は答えた。




374 名前: ◆KMIdNZG7Hs :2008/05/24(土) 03:10:45.02 ID:izVncKCt0
「可能」

いやいや、それをやったらゴーストタウンでしょうな。そっちも怪しいですよ。

「事情を知っている人たちに街の住人をやってもらうんです」

「なるほど、それなら可能ですね」

合点がいったように古泉が長門に話す。

「機関を総動員します。長門さんのお仲間にもご協力願います」

長門がうなずいた。こく。

驚いた、機関とTFEI端末団の協力作戦だ。

「ちょっと皆さん待ってください」

古泉はそういって携帯電話でどこかに連絡を取りはじめた。






その2へ



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コメント
この記事へのコメント
  1. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/06/04(水) 13:22: :edit
    面白いぶひー
  2. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2008/06/04(水) 13:49: :edit
    どうしてもハルヒが好きになれない俺がいる・・・
  3. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/06/04(水) 15:49: :edit
    うん、面白い面白い。
  4. 名前: 通常のナナシ #tIzNQ2cE: 2008/06/04(水) 16:57: :edit
    ラノベっぽい文章書くのが上手いなぁ
  5. 名前:  冷めてない名無しさん  #-: 2008/06/04(水) 17:11: :edit
    いいなこれ
    2に行くとしよう
  6. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/06/04(水) 17:15: :edit
    どうもキョンが原作とかけ離れすぎててよむ気しないな
    よんだけど
  7. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/06/04(水) 21:26: :edit
    かなり原作を読みこんでるなこれは
  8. 名前: 通常のナナシ #HEbkHpgA: 2008/06/05(木) 23:16: :edit
    別に1行ずつスペース入れても見難くないんだが
  9. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2008/06/06(金) 00:58: :edit
    さて、風邪を引きそうなんだが・・・・
  10. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/06/07(土) 00:17: :edit
    この作者には文才がある
  11. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/06/13(金) 16:25: :edit
    斬新な書き口だな
    参考になる
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