ローゼンメイデンの話「小さな恋の物語」その2

***
2008/05/09(金)
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 20:35:39.64 ID:g3DZTEkc0
あぁ・・・・私の傷口を広げる気か・・・!
    |  ..   ..  
    | : (ノ'A`)>:  イヤァァァァァァァァ
   / ̄: ( ヘヘ:: ̄

※その2です



113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 20:46:01.32 ID:7ngzqpX+0
「うぅ…」
 雛苺が小さくうめく。震えながらも、必死にいやいやと首を振る。
 がしゃあんと音を立て、そのまま床に押し倒す。
「あぅっ」
 薔薇水晶は、自分が何をしているのか、よく分からなかった。
「や…」
 雛苺が涙を浮かべて首を振る。
 ふらふらと、手を伸ばしてくる雛苺。
「……」
 薔薇水晶は落ち着いていた。
 空いた左手に、水晶の剣を出現させる。




114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 20:50:42.05 ID:7ngzqpX+0
 緑色の両の瞳に、恐怖が宿る。
「!!」
 苺わだちが発現し、剣を拘束する。
 ぎゅっと目を瞑る雛苺。
「お願……やめ……」
 薔薇水晶が力いっぱいに左手を振り、わだちをネジ切る。
 そしてそのまま、雛苺の胸に左手を振り下ろした。




115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 20:50:43.54 ID:+mPfu63B0
薔薇水晶やめるんだwwww!




118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 20:57:13.61 ID:7ngzqpX+0
 水銀燈の髪をとかし終えると、真紅は懐中時計をぱくっと開ける。
「3時40分」
 おもむろに立ち上がり、今度は一階へと降りていく。
「ジュン」
「ん」
 ダイニングで、ジュンが紅茶を淹れている。
「いつ出発するの?」
「ん〜〜〜」
 時計をちらっと見る。
「先生から連絡あってからでいいんじゃないのか?」
「嫌よ、何言ってるのよ」
 真紅が口を尖らせる。
「何が嫌なの?」
「5時からくんくん観ないといけないのよ。それくらい、分かってて言ってるの?」
「録画すりゃいいだろ…別に…」
「いいから、とりあえず連絡して頂戴。こちらの都合に合わせられるのなら、
そうした方が、いいでしょう?」
 腰に手を当て、真紅が不満そうに言う。




121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 21:11:26.92 ID:7ngzqpX+0
「こんにちはーかしらー」
 玄関から元気な声が響く。
「あら」
 真紅が玄関に向かうと、金糸雀が立っていた。
「こんにちは」
「遊びにきたかしら」
「本当?嬉しいけれど…今日はちょっと忙しいのよ」
 リビングに視線を送る真紅。
「忙しい?」
「ええ、実はね」
 話を聞き終え、金糸雀が少し残念そうな顔をする。
「そうなの…」
「ええ、まあ、もうじき巴も来るし、それから行くようにはしてるの」
 時計を見やる。
「それまで、少しの間なら家にいるけど、休んでく?」
「ええ、そうさせてもらえるなら。カナもやっぱり、一人は淋しいし」
「そう、決まりね。上がって頂戴」
 真紅が促し、二人はリビングに戻った。




122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 21:18:50.40 ID:7ngzqpX+0
 リビングで、ジュンが電話を掛けている。
「あれ…おかしいな…誰も出ないぞ」
 電話を切り、ジュンがソファに座り込む。
「出掛けてるんじゃないの?」
 真紅が答える。
「そうなるとやる事がないな……」
「巴を呼んで、一緒に遊びに行くとかどうかしら」
「金糸雀…巴は学校でしょう」
 ジュンがその言葉に、ちらっと真紅を見やる。
「あ…」
「くんくんのDVDでも観ましょう。Vol.3の、うさみちゃんとくんくんで、
クマ吉の犯罪行為を暴くのが楽しいのだわ」
 そう言って、脇のDVDを取りに行く真紅。
「うっ」
 ジュンが低くうめいた。




123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 21:19:51.23 ID:xYQNKQVh0
序盤からかしらの子とは、珍しい!
翠星石は、ちょっとJUM家にいられない事情になっちゃったんだっけ




125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 21:28:44.70 ID:klZdHmNRO
>>123
契約を解いたんじゃなかったっけ




128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 21:37:36.70 ID:7ngzqpX+0
 真紅が振り向く。
「熱っ……」
 指を押さえるジュン。
「どうしたの?」
「い、いや、何でもない。ちょっと指が熱くなっただけで…」
「指?」
「?」
 金糸雀がジュンを見やる。
「指輪が熱くなったの?」
「ああ」
 少しの間。
 視線を泳がせていた真紅の目が見開かれる。
「!!」
 バァンと音を立てて、真紅が駆け出した。
「お、おい」
「真紅!」





132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 21:43:35.16 ID:7ngzqpX+0
 ジュンが後を追う。
「真紅!!どこ行くんだ!」
 真紅は外ではなく、納戸の方へ駆けていく。
「ジュン君!真紅!」
 遅れて金糸雀も走ってくる。
「どうしたんだ、真紅」
 鏡に手を当て、じっとしている真紅。
「何でもないわ」
 振り返らずに呟く。
「何でもないって…お前…」
「ねえ、ジュン」
「ん?」
 振り返る。
「私、これから出掛けてくるわ」
「そ、そうか」
「心配しないで頂戴、ちょっと気になる事があっただけだから。ただ」
「ただ?」
「10分経って戻ってこなかったら、ホーリエをこちらに向かわせるから、来て頂戴」
「…あ、ああ」
「お願いね」
 そう言って、真紅は鏡の向こうに消えた。





136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:02:27.48 ID:7ngzqpX+0
 雛苺のローザミスティカが体内に入り込んだ後で、
薔薇水晶はようやく平静を取り戻した。
 天を見つめたまま、雛苺は事切れていた。
「………」
 薔薇水晶は彼女を見下ろしたまましばらく立ち尽くしていたが、
やがて、力なく項垂れた。
「……」
 緑色の、両の瞳を閉じる薔薇水晶。
「…わ……」
 自らの肩の震えが止まらない。
「…私…何て事を……」
 よろよろ、と後ずさり、どん、と壁にぶつかた後、ずるずると崩れ落ちる。




140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:05:57.58 ID:+mPfu63B0
>>136
雛が・・・雛が・・・・っ!




141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:06:40.86 ID:/CAvIZ0T0
/(^o^)\




142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:06:57.60 ID:PuFZOnTx0
雛苺しんじゃった




144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:12:10.95 ID:7ngzqpX+0
 もう顔を上げる事は出来なかった。
膝を抱え、何かにすがるように、ぎゅうっと自らを抱く腕に力をこめる。
「どうして……」
 首を何度も振る。振り続ける。
「違うの。違うの…」
 涙がとめどなく溢れてくる。
「そんなつもりじゃなかった…私は…」
 わぁぁぁと、薔薇水晶は声を上げて泣き始めた。

 鏡から真紅が現れるのと、泣き始めたのは、殆ど同時だった。




146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:20:25.89 ID:7ngzqpX+0
 聴きなれない泣き声に、真紅は用心深く歩を進める。
「この声は……薔薇水晶?…薔薇水晶が…泣いているの?」
 ステッキでドアを開ける。
「ホーリエ」
 人工精霊に導かれ、真紅はそっと、ドアの向こうを見た。

 机の上。電気スタンドの明かりの下。
 壁を背に、膝を抱えて泣いているのは薔薇水晶。
 そしてそこから少し左に目を転じると、倒れた椅子。
 その脇に、ぴくりとも動かない、大切な妹が転がっていた。




147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:26:47.03 ID:xYQNKQVh0
黒展開はじまったな




149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:31:15.76 ID:7ngzqpX+0
 何も聞こえなくなった。
 視界は灰色になり、ステッキがからん、からんと音を立てて床に落ちるのも、
真紅は認識出来なかった。

 雛苺の服は、レースが沢山ついてて可愛いわね。
 どうして目を閉じているのかしら。眠っているのかしら。
 涙の跡が見えるわ。あの白いのは何かしら。
 ここはお人形の部屋なのね。作りかけの人形が沢山あるわ。
 私も、こうやってお父様に作られたのね。
 あの電気スタンド、電気がついているのね。
 薔薇水晶?下ばかり向いてちゃ、美人が台無しよ。
 何よ、薔薇水晶も泣いてるの。
 あのチューリップの髪飾り、可愛いわね。
 凝った細工、私は好きよ。

 虚空を見つめる真紅。視線がゆっくりと、雛苺に向けられてゆく。




150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:36:12.66 ID:7ngzqpX+0
 胸に、穴が開いている。いや、正確には、刺し傷。
受け入れがたいその現実を、真紅が頭の中で認めた時、何かがぷつんと切れた。

「うっ………うあぁ……」

 頭を抱える真紅。

「いやああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 真紅が絶叫する。
 それに反応し、びくっとする薔薇水晶。

「いやああっ!雛苺っ!雛苺ぉっ!!どうしてぇっ!!」
 半狂乱になりながら、がくがくと雛苺を揺さぶる真紅。




160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:52:41.25 ID:7ngzqpX+0
「………」
 真紅は雛苺を抱いたまま、小刻みに震え続ける。
「………」
 自分が何をしてしまったのか。
 育んだものがどうなってしまったのか。
 薔薇水晶はそれだけは、はっきりと理解出来ていた。
 だからこそ、目の前の第5ドールへの恐怖が
増大し、動く事も、喋る事も、抑えられていた。
「………」
 自分はこれから何をされるのだろう。
どうなってしまうのだろう。
 その恐怖が、薔薇水晶を支配する。
「……薔薇水晶」
 真紅が口を開いた。




161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:53:14.17 ID:/CAvIZ0T0
ごくり…




162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 22:56:23.02 ID:+mPfu63B0
ドキドキ・・・・




165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:07:15.92 ID:7ngzqpX+0
 雛苺をもう一度床に寝かせ、真紅がおもむろに立ち上がった。
「ひっ」
 コツ、コツ、と響く靴音。
 がたがたと震え続ける薔薇水晶。
 当然の事ながら、その足音は自分の目の前で止まる。
「……」
 薔薇水晶は思わず顔を押さえる。
「貴女が、やったの?」
 驚くほどの冷静な声。
「………」
 薔薇水晶はそれには答えず、ただ小さく震えている。
 その場にしゃがみ込む真紅。
「お願い、薔薇水晶」
 両肩をつかむ。

「お願い、雛苺を返して」
 声が震える。
「私の妹なの」
 薔薇水晶が顔から手を離す。
「彼女は優しい子なの」
 涙を流している真紅。
「純真で、純粋で、貴女があの人を一途に思っているのと同じように」
「……」
「ね、お願い、お願いだから、返して」




167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:15:20.64 ID:7ngzqpX+0
「ねえ薔薇水晶、答えて、お願いだから」
 ゆさゆさと揺する。
「返して…あの子を…返してよ……」
 両手を落とす。
「お願い…雛苺を返して……!!」
 そのまま泣き崩れる真紅。
「ごめんなさい…」
 薔薇水晶は雛苺を見つめたまま、涙を流し続けている。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「あの子は」
 傍らにある、くしゃくしゃになった紙を取る真紅。
「貴女たちの事が大好きなのよ」
 薔薇水晶はそれに描かれたものが何であるか、ようやく
理解した。
 自分と、エンジュ。二人の。
「それなのに……」
「……わ…私…」
「どうして……」
 再び、嗚咽が漏れ始めた。




168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:17:33.40 ID:xYQNKQVh0
これはさすがに・・・赦せないだろな・・・




170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:31:52.76 ID:7ngzqpX+0
 日が完全に落ち、薔薇水晶は放心したように、倉庫の片隅で
虚空を見つめていた。
 「………」
 あの後、真紅は何もしなかった。
憎しみを爆発させる事はなかったし、怒りに任せて攻撃して
くる事もなかった。
 ただ、大切そうに雛苺を抱きかかえ、一度も振り向く事なく、
鏡に消えていった姿が、薔薇水晶の目に焼き付いている。
 エンジュは驚き、ショックを受けた様子だった。
だが、彼も真紅にかける言葉もなく、また、薔薇水晶に
何を言ってよいか、分からない風だった。

 全てを自分が壊してしまったのだ。自分の幼稚な感情が、
周りの世界を灰色に変えてしまった。
 そして、薔薇水晶自身、気づいた事があった。
雛苺は、エンジュを『先生』として慕っていただけで、特別な
感情など持っていなかった。

 持っていたのは、他でもない、自分自身だった。
それは普段気付かない、小さな小さな、心の奥に
隠れた想い。
 『一緒にいたい』という、純粋な欲求だった。




171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:37:36.20 ID:+mPfu63B0
(´;ω;`)ううっ・・・・、どうなるんだろう・・・




172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:39:27.54 ID:/CAvIZ0T0
なんとか命だけは助かったか
スレタイからハッピーエンドで終わると思っていたがどうなるだろうか…




173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:42:05.34 ID:g3DZTEkc0
つД`)・゚・。・゚゚・*:.。




174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:42:10.25 ID:7ngzqpX+0
 ガチャ、と音がして、倉庫のドアが開いた。
 薔薇水晶がそちらに視線を向けると、エンジュが立っていた。
「…薔薇水晶」
「………」
 しばらくエンジュを見つめていたが、やがて再び虚空に視線を戻す。
「落ち着いたかい?」
 エンジュが声を掛ける。
「…」
「……お父様」
 かすれた声で、薔薇水晶が呟いた。
「…彼女はどうすれば戻ってくるの」
「え」
「…私、彼女に謝らないといけないの」
「薔薇水晶」
「……ごめんなさいって……」
「……」
「私がどうかしていたのって……」
 膝を抱え直す。
「別にアリスゲームをしたいわけじゃなくて……」
 エンジュは黙っている。
「……私は……ただ……」





175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:43:05.30 ID:8pLNxFFo0
スレタイの「小さな恋の物語」に惹かれて開いてしまった

チッチとサリー・・・懐かしい




177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:50:52.79 ID:g3DZTEkc0
かなしすぐる・・・




178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/07(水) 23:52:52.80 ID:dWrDJ3wj0
(´;ω;`)ウッ




179 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/07(水) 23:55:47.08 ID:7ngzqpX+0
 エンジュには、ひとつしか方法が見当たらない。
「………」
 けれど、それをこの少女に伝えてしまう事は、とても出来ない。
「ねえ、お父様」
「…うん?」
 ぎゅっと拳を握る。
「……私が」
「うん」
「…一度、壊れてしまうしかないんでしょう」
 エンジュは目を見開く。
「分かるの。私には……」
「……」
「私が、彼女のローザミスティカを奪ったのと同じように」
 うつむくエンジュ。
「……誰かに、奪われてしまうしか、ないんでしょう」
 そこまで言うと、薔薇水晶はエンジュを見上げ、
いやいやと首を振りながら、顔をくしゃくしゃにする。




180 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/07(水) 23:56:23.40 ID:7ngzqpX+0
「薔薇水晶……!」
 思わず駆け寄る。
 それを待っていたかのように、まるで子どものように
抱きつく。
「いや、怖い」
 首を振る。
「壊れてしまいたくない」
 涙を流す。
「闇の中になんて行きたくない」
 ぎゅっと肩をつかむ薔薇水晶。
「私はどうしたらいいの…」
「……」
「助けて、お父様……」
 薔薇水晶はしばらく泣き続けた。
そんな彼女を、エンジュは、強く抱き締めた。




195 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/08(木) 00:41:03.85 ID:0ydVy5mw0
 薔薇水晶が次に目覚めた時、傍らに人影が座っていた。
「起きた?」
「ん……」
「うなされていたわよ」
 黒い翼を、時おり撫でる。
 美しい銀色の髪が、風になびく。
「貴女は……」
 菜の花の甘い香り。
 第1ドール、水銀燈が、春の日差しの中で、微笑んでいた。

「こんな所で寝ちゃってどうするのぉ」
「ご…ごめんなさい…」
 しょぼくれる薔薇水晶。そんな薔薇水晶を、水銀燈が
優しく見つめた。
「ところで……」
「なぁに」
「どうして、貴女が?」
「ん?」
「確か……」
「頭カタイわねぇ。何だっていいじゃないのよぉ。別に」




196 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/08(木) 00:41:38.24 ID:0ydVy5mw0
 立ち上がる水銀燈。
「こういう所にも、来た事ないんでしょう?」
「……ええ」
「いいこと、薔薇水晶」
「はい」
「せっかく、お父様が特別に与えてくれた命なのだから」
「…はい」
「動けるうちに、色んなものを見て、楽しく過ごしなさい」
「………」
「菜の花の香りはとても甘いし」
「………」
「春の日差しはとても暖かい。」
 膝を抱える水銀燈。
「テレビアニメだって、面白いものばかりよぉ。」
「………」
「この時代なら美味しいものが沢山食べられるし」
「……」
「公園に行けば、綺麗な噴水が見られる」
「……」




199 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/08(木) 00:42:22.27 ID:0ydVy5mw0
「私たちは、生まれた命じゃない。作られた命なの」
「……」
「どれだけ綺麗事を云ったって、その事実には抗えない」
「……」
「だから、私たちには、いつかは絶望が待っている」
「………」
「せめてそれまで、楽しく、幸せに暮らす事」
「………」
「それを手に入れるには、恐怖や、怯え、苦しみ」
「………」
「痛み、悲しみ、涙、我慢、屈辱」
「…………」
「色んなものを、何度も何度も、乗り越えないといけないけれど」
「………」
「それでも、逃げたり、後悔するよりは、幾分かマシな生活が出来るわ」
 薔薇水晶はうつむく。
「だから」
「はい」
「自分が決して後悔しないだろう道を、選びなさい」
「……はい」
「貴女はまだ、この世界にいられるだから、ね」
「わかりました」
 薔薇水晶は水銀燈を見据え、そう答えた。
 水銀燈は微笑み、やがて、消えていった。





207 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/08(木) 00:58:40.18 ID:0ydVy5mw0
 少し気が遠くなったかと思うと、薔薇水晶は公園のベンチに
座っていた。
「…ここは……」
 足音が聞こえる。
「…薔薇水晶」
 先ほどとはうって変わって、優しい声。
 振り向く薔薇水晶。
「あっ」
 薔薇水晶は声を上げた。
「雛苺!!」
 うす暗い林の中から現れたのは、自分が命を奪ってしまった雛苺だった。
「………雛苺!…ごめんなさい…私…私は…」
「…薔薇水晶?」
 どこか透き通るような声。
「泣いているの?」
 その言葉で、いつの間にか涙を流しているのに気づく。
「あ…の…」
「気にしないで」
 雛苺が悲しげに微笑む。
「ヒナはアリスゲームに負けていたの」
「え」
「ずっと前に、真紅と闘って…」
 うつむく雛苺。




208 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/08(木) 00:59:04.14 ID:0ydVy5mw0
「トモエや真紅や」
「……」
「ジュンにもう会えないのは淋しいけど」
 薔薇水晶は項垂れる。
「ヒナのせいで、誰かが傷つくのは、もうイヤだから」
 そう言うと、雛苺は微笑む。
「……うっ……あ…ひ…雛苺……うぅっ…」
「どうしたの、泣かないで」
 しゃくり上げる薔薇水晶。
「ごめんね、ヒナのせいで」
 その場に倒れこみ、薔薇水晶は泣き続ける。
雛苺は、そんな薔薇水晶を優しく撫でた。




209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/08(木) 01:00:50.85 ID:NEvCsKbv0
( ;∀;)イイハナシダナー




215 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/08(木) 01:19:24.76 ID:0ydVy5mw0
「はっ!!」
 薔薇水晶が飛び起きた時には、窓から日差しが入ってきていた。
「………」
 いつもの部屋だ。
「夢…だったの……?それとも……」
 胸を押さえる。
「…………」
 じっと眼を閉じていた薔薇水晶は、5分ほどしてから再び眼を開ける。
 その瞳に、いつもの鋭さが戻っていた。

「お父様」
 台所にいるエンジュ。
「…あ、ああ、おはよう!」
 何やら目の下にクマが出来ている。
「話があります」
 静かな口調。
 エンジュはこちらを見つめていたが、やがてコンロの火を消し、こくりと頷いた。




216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/08(木) 01:21:57.46 ID:L/nJ2TeR0
何か決意したのか…?




218 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/08(木) 01:28:05.38 ID:0ydVy5mw0
「………認めるわけにはいかないな」
 話を聞き終えたエンジュは、強い口調で言い放った。
「どうして」
「僕は君を一時的にしろ、失いたくはない。だから、そんな相談をされても、首を縦には振らない」
「…でも」
「『自刃するので後で直して下さい』なんて、それは勝手だ。君の身勝手だ」
 首を横に振る。
「そう……」
 薔薇水晶はうつむいた。


 部屋の中。
 薔薇水晶が、『責』という字を丁寧に書いている。
「……うーん」
 漢字をよく知らない薔薇水晶は、自分の名前もまともに書けない。
「……でも、やらなきゃ」
 頭がパンクしそうになりながらも、薔薇水晶は筆を走らせた。




365 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 00:30:12.96 ID:4x0DCqkW0
 ペンを置き、薔薇水晶は深呼吸する。
「ふうーっ」
 しばらく、机の上の紙を見つめ、もう一度息を吐く。
「………」
 胸に手を当てる。ほんの少し、あたたかい。
「………」
 やがて立ち上がり、薔薇水晶は鏡の向こうへ消えた。

 真紅が窓の外を見つめている。
「……」
 呆けたように、視線を動かす事もなく、ぼんやりとしている。
 部屋の隅、鞄の中で、雛苺が眠っている。
「………」
 真紅はため息をついた。
「くんくんでも観ようかしら…」
 ふぅ、と、もう一度ため息をつく真紅。
 トン、トン、と階段を降り、一階に着いた時、視界の隅に
何かが映る。
「真紅」
 目を見開く。
 薔薇水晶が、立っていた。





370 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 00:37:36.66 ID:4x0DCqkW0
「………」
 真紅は何かを言おうとするが、うまく言葉が出てこない。
「真紅………」
 悲しそうな表情になる。
「ば、薔薇水晶……」
「ごめんなさい…」
 そう言って、薔薇水晶は頭を下げた。
「……」
「私のした事は、許される事ではないと思うわ……」
「……」
 その場に座り込み、うつむく薔薇水晶。
 真紅は、そんな彼女をじっと見つめる。
「……どうしてここへ?」
 見つめたまま、真紅が口を開いた。




373 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 00:44:56.99 ID:4x0DCqkW0
「………」
 一瞬視線が泳ぐ。
「…実は」
 ぎゅっと、両の拳を握り直す。
「お願いがあって…」
「…お願い?」
 表情ひとつ変えない真紅。いや、変えられない、というべきか。
「貴女にお願いしたいの」
「………」
 近づいていく真紅。
「私に何の用があるの?」
「……」
 その声は無機質で、無頓着で、何か抜けがらのような空虚を感じさせる。
「………」
 薔薇水晶は言葉をつぐんだ。
 うつむき、少し鼓動が早まる。




379 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:51:46.91 ID:oT9hwF7/0
薔薇水晶が自分でいっしょうけんめい考えたと思うと、愛しさとせつなさと心強さで興奮する




380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 00:53:26.53 ID:0HxoWTDv0
>>379
篠原涼子乙

支援




382 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:00:47.71 ID:4x0DCqkW0
 言わなくてはいけない。
 あの言葉を。
「……今から」
 声が震える。
「何?」
 薔薇水晶は目を閉じた。
 
 迷いは消えない。
 正解のない二択。
 夢の中で、水銀燈が言っていた事。
 ローザミスティカを奪われてなお、自らを慰めてくれた雛苺。
 彼女たちが伝えてくれた事を、今一度思い返す。

 けれど、彼女たちも知らない事実を、薔薇水晶は今、痛いほど自覚している。
薔薇水晶は、ローゼンメイデンではない。
 当然、ローザミスティカも持ち得ない。
 
 
「…………」

 長い、長い沈黙が過ぎた。




383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:05:31.18 ID:oT9hwF7/0
そうか、ばらすぃにはローザミスティカはないのか・・・
雛のローザミスティカはもってるんだったよな




385 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:06:19.47 ID:4x0DCqkW0
 真紅の目にも、薔薇水晶が震えているのがよくわかった。
 そんなに強い子ではない。
 きっと、何かに怯えていて、その恐怖に、必死に向き合おうとしているのだろう。
「………」
 それでも、今の真紅に、彼女の肩を抱く事は出来ない。
 だから、真紅は何も云わなかった。

「ね、真紅……」
 絞り出すような声。
「…ホーリエを」
 こちらを見つめる薔薇水晶。
 真紅が、少し首を傾げた。




389 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:14:26.07 ID:4x0DCqkW0
「どうして?」
「……私」
 握っていた両手で、自らの肘を抱きかかえる。
「貴女と雛苺に謝らなきゃいけないの」
「………」
「…怖いけれど」
「………」
「正直」
 ぶんぶんと首を振る薔薇水晶。
「…自分がどうなってしまうのか、怖い…考えたくない」
「……」
「でも」
 震えは止まらない。
「…後悔しない道を選ぶわ、私は」
「……」
「だから貴女にお願いがあるの」
 おもむろに、髪飾りの水晶を手に取る。
 真紅は彼女が何をしようとしているか、そこで何となく理解出来た。




390 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:20:21.67 ID:oT9hwF7/0
頭でなく心で理解したwktk
あの甘えん坊の薔薇が、こんな決断を・・!




391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:22:44.54 ID:0HxoWTDv0
ううっ!涙が止らねぇ・・・




392 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:24:00.70 ID:4x0DCqkW0
 次の瞬間、ドッ、という鈍い音と共に、薔薇水晶はそれを
自らの胸に突き立てる。
「う……」
「薔薇水晶!」
 薔薇水晶の顔が苦痛に歪む。
 駆け寄る真紅。
 身体が揺れ、真紅がそれを支える。
「何てことを……」
「いいの、それより」
 薔薇水晶の身体が光り始め、ピンク色のローザミスティカが出現した。
「これは……雛苺の…これを、彼女に……」
「え?」
「私のお願いはそ……れだけ……ホーリエに……」
 真紅は反射的にホーリエを呼び出し、守らせる。
 薔薇水晶は目を閉じ、ぐったりと真紅に身体を預けていた。
「しっかりして」
「…………」
 薔薇水晶の身体から力が抜け、床に崩れ落ちた。





393 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:25:29.17 ID:DwksSE570
いやあああああああああああああああああ




394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:26:58.64 ID:0HxoWTDv0
。・゚・(ノД`)・゚・。ウワァァァァァァ




395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:27:29.20 ID:oT9hwF7/0
。・゚・(ノД`)・゚・。




396 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:28:00.65 ID:RiXkMfc/O
薔薇水晶ォォォオッ!




399 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:34:01.88 ID:4x0DCqkW0
 ドンドン、とドアを叩く音がする。
ほどなくして、エンジュが飛び込んできた。
「薔薇水晶!!」
 玄関を開けたエンジュの目に映ったのは、真紅と雛苺、金糸雀、巴、ジュン、
そしてその中央に横たわる、薔薇水晶。
「先生!」
「薔薇……」
 がくんと膝をつくエンジュ。右手に持った紙が、床へ落ちる。
「う……」
 頭を抱える。
「うおおおおおおあああああ!!!!」
 光を失った最愛の人形を前に、エンジュが絶叫した。




400 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:39:18.64 ID:GcyM4Guz0
うおおおおおおあああああ!!!!




402 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:42:14.59 ID:4x0DCqkW0
――――ごめんなさい、お父様

――――私は、今回だけ、あなたに逆らうことにしました

――――別に、お父様がキライなわけじゃないのです

――――私自身が、そうする事を選んだのです

――――私の幼ちな心が招いたことだから

――――私のワガママで締めくくらせてほしいのです

――――読みづらかったら、ごめんなさい

――――辞典で調べながら、書いてるので

――――この国の文字は、どうしてこんなにむずかしいのかしら




405 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:46:24.56 ID:4x0DCqkW0
――――ここから先は、真紅たちには読まれないように


――――して下さい。恥ずかしいので


――――お父様


――――私はあの時、公園に行って


――――良かったと思っています


――――色んなものが見れて


――――それから色んな体験をしたからなのです


――――私はローゼンメイデンじゃない


――――だけど





409 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:51:29.69 ID:4x0DCqkW0
――――お父様に愛されたい


――――それだけが私の全てだった


――――いつの間にか、それだけが当たり前だと


――――世界の全てだと


――――でもちがった


――――お父様


――――私のいれるお茶は、美味しいらしいです


――――真紅たちが、いえ、お姉さまたちが、そう言ってくれたのです


――――その時、私はなんだかうれしかった





410 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 01:55:56.54 ID:oT9hwF7/0
これが初めての反抗・・・




411 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 01:56:23.23 ID:4x0DCqkW0
――――正直、私には、何が何だか


――――倒してローザミスティカを集めて……


――――それが一気にどうでもよくなった


――――ごめんなさい 私は少しおかしくなったのかもしれません


――――何を大切にしていいか、よくわからなくなりました


――――でも


――――真紅も、雛苺も、優しくて


――――その優しさの中に、私も一緒にいたいと思った





413 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 02:00:39.24 ID:4x0DCqkW0
――――怒ったでしょうか?もし怒ってたら


――――きっと、私には、お父様と、もう一緒にいる資かくはないのだと思います


――――お父様に怒られてもいいから


――――お姉さまたちの優しさに触れていたい 私はそうしたい


――――だから


――――どうか彼女たちを責めないで


――――私が選んだ事だし


――――私は、6番めのお姉さまに


――――あやまりたい だけなので





414 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:03:50.63 ID:0HxoWTDv0
(´;ω;`)良い子だお・・・




415 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 02:04:02.60 ID:4x0DCqkW0
――――最後に


――――私は、やっぱり怖いです


――――皆と


――――何より


――――お父様と、一緒にいたいけど


――――私はこれから、一人でどこか別のところに


――――行かなくてはいけない


――――どうやって戻ってきたらいいのかも、ろくに考えていないし




416 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 02:07:44.80 ID:4x0DCqkW0
――――だから、もし許されるのであれば


――――どうか私を、見つけてほしいのです


――――こないだ林で迷子になってしまったように


――――私はすぐに迷子になってしまうから


――――でも、腰の痛みがあれば


――――それは治療してからにして下さいね


――――世界で一番大好きな


――――私のお父様へ


                     薔薇水晶






417 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:08:28.38 ID:oT9hwF7/0
優しい子だなあ。・゚・(ノД`)・゚・。




419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:18:09.14 ID:oT9hwF7/0
あんなに、壊れること、お父様と別れることを恐がっていたのに・・・。・゚・(ノД`)・゚・。




420 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 02:19:31.90 ID:4x0DCqkW0








「ふわ〜あ、…あれ、真紅」
 リビングのドアを開けるジュン。
「あら、起きたの?もう夕方よ」
 音量を下げる真紅。
「えっ、ホントか?」
 意外そうな返事をする。
「ええ、もうくんくんが始まってるもの」
「そうかぁ」
「そうかぁ、じゃないでしょう。のりに洗濯物頼まれてたんじゃないの?」
 ふうっとため息をつく。
 ジュンの顔が、一気に青ざめた。
「やっ、やっべぇ!!」
 ドタドタと走りまわる。
「全く………使えない下僕ね。ジュン、ちょっと」
 だだだ、とリビングに入ってくる。
「な、なんだ」
「雛苺たちが戻ってきたら、あの子の服も洗濯しておくのよ」
「なんでだよ」
 やれやれ、という風に両手を上げる真紅。
「汚れるでしょう。皆で土手に行ってるのだから」





423 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 02:27:03.32 ID:4x0DCqkW0
「あーん、待ってなの金糸雀ー」
「早くくるかしらー」
 土手で、金糸雀と雛苺が、追いかけっこをしている。
「……ふう」
 夕日を浴びながら、巴がぼんやりと二人を見つめている。
 ヒュウッと風が抜け、そのひんやりとした感覚に、巴は
思わず腕をさする。
「わっぷ」
 べしゃっとつまずく雛苺。
「あ、雛苺」
 立ち上がる巴。
「大丈夫か?」
 傍らで見ていたエンジュが声をかける。
「平気なの!」
「やれやれ……」
 再び走り出す雛苺に、エンジュは苦笑する。
 その腕の中で、薔薇水晶が静かに眠っている。




425 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 02:34:02.48 ID:4x0DCqkW0
「よっこいしょ」
 薔薇水晶を抱き直すエンジュ。
 髪を撫で、眼帯のない穏やかな寝顔に、少し笑みをこぼす。


「…………」
 ゆっくりと、その両の瞳が開かれる。
「起きたかい?」
「………」
 寝ぼけ眼でエンジュを見上げ、ぽふっと、その胸に頬を沈ませる。
「あ、薔薇水晶が起きたのー」
 雛苺がこちらに近づいてくる。
「おはよう、お姉さま……」
 薔薇水晶は、そう言って、優しく微笑んだ。


 エンジュの腕から飛び降り、追いかけっこに加わる薔薇水晶。

その髪飾りの水晶に、夕日のオレンジが、鮮やかに反射し続けていた。




    【完】






426 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:35:00.89 ID:hkiFKjJq0
オツカレ!!!!
寝る!!!!!
ハッピーエンドでよかったwwwwwww




430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:36:33.61 ID:BESv9qIuO
良い話だ




431 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:36:46.44 ID:YbjkQ5fzO
>>1乙 1の作品でここまで鬱展開がないのは小話以来wwwwwww




432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:37:15.82 ID:oT9hwF7/0
ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!乙でした!
冷や冷やさせやがって!まさに狙いどおりなんだろうなw
鬱エンド回避とは意外でした・・・>>1の巴が淋しそうだったから
いま見返したら、きれいにつながってんなー




433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/05/09(金) 02:37:56.39 ID:jDa19wEq0
>>1
( ;∀;)イイハナシダナー
またいつか次回作期待してるよ。




439 : ◆JtU6Ps3/ps :2008/05/09(金) 02:46:20.79 ID:4x0DCqkW0
まずはみんな保守乙!
こんな時間になってしまったのはごめんなさい。


タイトルの補足。
タイトルは>>175に書いてある通り、みつはしちかこ先生の「小さな恋のものがたり」からです。
名作だから、知ってる人はここ見てる人でも多いかもしらんね。

それじゃあ、またなんか思いついたら投下させていただきます。みんなありがとう!!







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コメント
この記事へのコメント
  1. 名前: 通常のナナシ #.rEgMis2: 2008/05/09(金) 05:18: :edit
    鬱エンドじゃなくてよかった・・・
  2. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2008/05/09(金) 05:25: :edit
    この>>1は相変わらずgj
  3. 名前: 通常のナナシ #.rEgMis2: 2008/05/09(金) 05:32: :edit
    おれの嫁と蒼い子がいないな

    しかしGJ
  4. 名前: 名無しさん #-: 2008/05/09(金) 09:48: :edit
    その1にコメ欄ないからコメやめたのかと思ったわ
  5. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2008/05/09(金) 10:10: :edit
    相変わらず面白いな
  6. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/09(金) 11:08: :edit
    悪くないが自己主張が強いな
    そうでなければモチベ上がらないのなら別にいいけど
  7. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/09(金) 12:19: :edit
    GJとしか言い様が無い
  8. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/09(金) 16:28: :edit
    コメ4
    たぶんネタばれ防止だろ
  9. 名前:    #-: 2008/05/09(金) 17:21: :edit
    槐は本編だと自己顕示欲満たす為に暗躍してたイメージしかないな
    てか皆、薔薇がお父様発言=槐=ローゼン って風には目が向かなかったのか?前話でネタバレ済みだったっけ?
    粗探し乙
    翠蒼は涙目だろうがイイハナシダター
  10. 名前: 通常のナナシ #jWeOCmHw: 2008/05/09(金) 19:32: :edit
    ( ;∀;)イイハナシダナー

    >>1
    またGJ!なお話しを書いてください><
  11. 名前:    #-: 2008/05/09(金) 20:32: :edit
    まさかの鬱ED回避・・・いやよかった
  12. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2008/05/09(金) 23:16: :edit
    まさかVIPでみつはしちかこの名を見るとは
    いい話だな
  13. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/10(土) 01:02: :edit
    嘘みたいだろ?
    俺、泣いてんだぜ?
  14. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/10(土) 03:51: :edit
    これはGJといわざるを得ない
  15. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/10(土) 05:41: :edit
    まさか最後の手紙で俺の涙腺が崩壊するとは思わなかった。・゚・(ノД`)・゚・。
  16. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/10(土) 15:39: :edit
    この銀様はあまりにもいい長女
  17. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/10(土) 17:22: :edit
    話が進むたびに一人一人順番に壊れていってしまうんじゃないかと思ったze
  18. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/13(火) 17:36: :edit
    これはいい
  19. 名前: 通常のナナシ #-: 2008/05/21(水) 06:19: :edit
    >>1お疲れ様です。
    ハッピーエンドで凄くよかったです☆
  20. 名前: 名無し #-: 2008/07/22(火) 12:25: :edit
    水銀燈はいい子だなめぐとお幸せに!
    いい話でした!
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c o m m e n t
p a s s