水銀燈「会いたかったです・・・お父様」

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2009/05/30(土)
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:16:49.40 ID:WEnsP4mg0
「あ・・・貴方が・・・?」

水銀燈は震え上がった。
どれだけこの瞬間を待ち望んだのだろうか。

何十年何百年と姉妹たちと戦い続けた。
永かった。永遠に戦い続けなければいけないのかとも思っていた。

しかし戦いは終わり、水銀燈はある人間と遂に対峙した。

「そう、私が君の生みの親だ。水銀燈」

「お父様・・・!」




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:19:49.27 ID:WEnsP4mg0
「おめでとう。君は私に会う資格を手にしたんだね?」

ローゼンは水銀燈が想像していた以上に優しく語りかける。
少なからず水銀燈は動揺する。

「は、はい・・・証拠は」

「いや、いいよ。感覚で分かる」

「いえ、是非ご覧になって?」

水銀燈は目を閉じ、力を込める。
するとその胸元に、6つの光る宝石の様なものが浮かび上がった。




3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:22:02.82 ID:WEnsP4mg0
「ほう、見なくても結構だったが・・・流石だよ、水銀燈」

「・・・ありがとうございます、お父様」

6つの宝石の様なもの、もといローザミスティカ。
かつては姉妹のそれぞれに存在していた人間で言う心臓。
水銀燈はそれらを全て手にしていた。

水銀燈は、姉妹全員を手にかけた。
全てはローゼンに会うために。




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:25:44.05 ID:WEnsP4mg0
始めは蒼星石のローザミスティカを奪った。
といってもこれは漁夫の利だったが。
翠星石の泣き顔が今でも鮮明に思い浮かぶ。

その次に翠星石のローザミスティカを奪った。
nのフィールドで泣きじゃくっていたところを不意打ちした。
最後まで蒼星石、蒼星石とうわ言のように呟いていた。

その次は金糸雀のローザミスティカを奪った。
ミーディアムを人質にとり、nのフィールドで戦った。

ここで水銀燈は思い出す。
正面から戦ったのは金糸雀と真紅くらいねぇ、と。




7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:28:35.02 ID:WEnsP4mg0
金糸雀との戦いは水銀燈が勝った。
止めを刺す瞬間、金糸雀は泣いていた。
金糸雀のミーディアムも泣いていた。
その泣き顔を見るのが辛くなり、水銀燈は逃げるようにその場を去った。

あの涙は、何の涙だったのだろうか?
悲しみ?恨み?絶望?憤怒?
答えは恐らく出せないだろう、水銀燈は考えるのをやめる。

「水銀燈・・・傍においで」

ローゼンが水銀燈を傍に呼び寄せる。
水銀燈は黙ってそれにしたがった。




9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:31:44.80 ID:WEnsP4mg0
一歩一歩近づく度に、ローゼンと言う人形師の圧倒的な存在感がひしひしと伝わる。
ローゼンメイデンを創った人物だ。当然といえば当然なのか。

末妹・・・雪華綺晶のローザミスティカは楽に奪うことが出来た。
ある事に協力すると言ったら簡単に差し出してくれた。

協力するというのはもちろん嘘。
奪ってすぐに取り込み、そのまま雪華綺晶はnのフィールドに閉じ込めた。

雛苺のローザミスティカは直接奪うことは出来なかった。
雪華綺晶にボディを奪われ、ローザミスティカは真紅が取り込んでいたから。
雪華綺晶のローザミスティカを奪ったときに、ボディが雛苺だったので分かってはいたことだけれども。




10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:34:48.47 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

「私のミーディアム、死んじゃったのよ」

真紅はいきなり何を言い出すんだとでも言いたげな顔で水銀燈を見る。

「貴女・・・ミーディアムが居たの?」

「ええ。今まで隠してたけれどね」

「・・・同情して欲しいとでも言うの?」

少しだけ真紅の拳に力が込められる。
もしその体が人間と同じものなら、手のひらから出血するくらい爪が食い込んでいた。




12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:37:39.13 ID:WEnsP4mg0
「貴女のミーディアムが亡くなったというなら、それは確かに気の毒だわ。でも・・・それが免罪符になるとでも?」

「なるとは思ってないわよ。でも、ミーディアムの死が私のターニングポイントになったのは確かねぇ」

水銀燈は感情を込めずに淡々と続ける。

「・・・真紅にだけは言っておこうと思っただけよ。貴女は私の好敵手だもの」

「そう。私は貴女が姉妹の仇にしか見えないけれど・・・!」

真紅は怒っていた。
水銀燈に体内には雛苺以外の姉妹のローザミスティカが存在している。

・・・全ては、水銀燈の所為だ。




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:41:01.83 ID:WEnsP4mg0
「そう、その感情が大事よ!それがなきゃアリスゲームとは呼べないわぁ!!もっと、もっと私を憎みなさい!」

流石の真紅もこの状況を無視することは出来なかった。

「貴女の力で私を・・・殺してみなさぁい!!」

真紅は感情に身を任せて、水銀燈に突撃した。

「水銀燈ッ!許さない!許さないわ!!」

「許す必要なんか無いわよぉ・・・おバカさぁん」




18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:45:09.38 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

「あら、結構粘ったみたいだけれど・・・もうお終いねぇ」

「くっ・・・水銀燈・・・!!」

力の差は天と地ほどあった。
基本的な性能が桁違いだったのだ。

水銀燈は5つ、真紅は2つ。
ローザミスティカは薔薇乙女の力の源。1つ在るだけで力が劇的に上昇する。
それ故、真紅は水銀燈に太刀打ちできるはずがなかった。

「最後に言っておきたい事はない?聞いてあげるわよぉ?」




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:48:58.37 ID:YhcrpcvC0
真紅「バスケがしたいです・・・」




22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:49:39.38 ID:WEnsP4mg0
真紅は満身創痍だった。
最早観念したのか、戦う意思を見せることもなく水銀燈にある疑問をぶつける。

「貴女、このところ急に活動的になってたようね」

「そうねぇ。今まで大人しすぎたのかも・・・恥ずべき事だわ」

「その、ミーディアムとの死が何か関係でもあるのかしら?」

他にも聞きたいこと、言いたいことは一杯あったかもしれない。
だが真紅はあえてこの質問をした。

「・・・私のミーディアムは、心臓を患ってたの」

「病気・・・?」





24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:53:18.91 ID:WEnsP4mg0
「ええ。アリスゲームになろうものなら私は加減を見誤って力を吸い取りすぎるかもしれなかった」

「・・・そのミーディアムが亡くなったのは、もしかして」

「勘違いしないで、自然死よ。・・・いや、病死だから自然も何も無いでしょうねぇ」

「・・・」

水銀燈は思い出しながら、話を続ける。
真紅はやがて何も口出しをしなくなった。

「全てのローザミスティカを集めて、その力をめぐに送ればもしかしたら・・・と思ったわ。あ、めぐってのはミーディアムの名前ね」

「でもそれならアリスゲームで全てのドールズを倒さなきゃならない。どうしようもなかったわ」

「めぐが死んでしまった今ならもう力の加減も関係ない。といっても殆ど不意打ちでドールズを倒していったけれどねぇ」




25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 20:57:50.16 ID:WEnsP4mg0

「・・・これが、私が最近活発になっていたワケ。失うものが無くなったから・・・それだけよ」

そこまで一気にしゃべり終わると、自前の剣を突きつける。

「失うもの?それじゃあ、私たち姉妹はどうだって言うの!?」

「・・・それが、アリスゲームでしょう?」

真紅の返事を聞かずして、真紅の体に剣を突き刺した。

「さようなら、真紅」

真紅と雛苺のローザミスティカを取り込む。
そして動かなくなった真紅を抱え、水銀燈は出口を目指した。
自分にはやらなければいけないことがあると自分に言い聞かせながら。




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:03:01.55 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

「水銀燈、何か望みは無いかい?」

ローゼンは水銀燈に問いかける。
急に聞かれたので水銀燈は少し慌てたが、落ち着きを取り戻すように静かに答える。

「・・・抱いてください。親が子を抱くように」

「うん。いいだろう」

それだけを言うと、ローゼンは水銀燈を優しく抱き上げる。

「・・・暖かいですわ。お父様」

「そうかい?それは良かった」

暫く、二人共動く事はなかった。




28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:06:35.59 ID:WEnsP4mg0
どれだけの時間が流れたのだろうか?
水銀燈は我に返り、抱かれたままローゼンに話しかける。

「お父様・・・」

「何だい?」

「お父様の思い描くアリスに、私はなれなかったと思うんです」

「・・・何故だい?」

ローゼンが尋ねる。
水銀燈は黙々と続ける。




29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:10:05.30 ID:WEnsP4mg0
「理想は理想でしかない。理想には決して近づけない。だからこそ人は理想を抱き、憧れる・・・」

「そういう考えもあるね。でも、今の君は僕が思い描くアリスに最も近いと思うよ」

「お父様、私たち姉妹からアリスは生まれないとお考えでしたの?」

「ああ。『究極』それこそ理想の最上級の言葉だと思うんだ」

アリスゲームではアリスは生まれない。
実際、水銀燈はアリスでも何でもない。

『ローゼンが思い描くアリスに近いドール』になっただけだった。




31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:13:53.84 ID:WEnsP4mg0
「・・・やっぱり、そうでしたのね?」

「怒ったかい?」

「いいえ。貴方は私達の生みの親。文句など何もありません」

ただ・・・と水銀燈は言葉を付け足す。

「これで決心できました、お父様」

「聞いてみようか。何を決心したんだい?」



「お父様、貴方を殺します」

「そうか!それなら私も君を殺さなければならなくなった!」




32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:14:38.71 ID:MZNeYD+J0
急展開www




33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:15:48.14 ID:f0AdsJZp0
なんだこれwwwwwwww




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:16:53.54 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

「何で・・・何でこんな事を!水銀燈!!」

ジュンは怒りを隠せない。
もう動かなくなった真紅を水銀燈は雑にジュンに投げ渡す。

「・・・これがアリスゲームなのよ、人間」

水銀燈は遠くを見つめながら、そっけなく答える。
それを見たジュンは、ただ感情のままに怒った。

「お前のせいで・・・翠星石が!雛苺が!真紅が!みんなが・・・!!」

「死んだとでも言うのかしら?」

「水銀燈・・・!!」




35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:20:17.18 ID:WEnsP4mg0
「貴方にはわからないでしょう?私たちドールズのみを縛るアリスゲームという呪縛・・・」

「そ、それでも!お前は何とも思わないのか!?」

ジュンは泣きながら、それでも水銀燈に必死に噛み付こうとする。

「どうでしょうねぇ・・・ま、真紅は鞄で寝かせておきなさい」

そこまでいうと、再びパソコンのモニタに姿を消そうとする。
が、何かを思い出しジュンにまた話しかける。

「貴方、裁縫が得意なんでしょう?真紅のドレス・・・きちんと直してあげなさいよ?」

それだけを伝え、水銀燈はnのフィールドに姿を消した。
ジュンの耳にその言葉は届いていたのだろうか?




36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:23:40.80 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

水銀燈の手には蒼星石の庭師のハサミが。
ローゼンの手にはナイフがそれぞれ握られている。

「が・・・はっ・・・!」

「く・・・」

鋏はローゼンの胸元を貫き、ナイフは水銀燈の背中に深々と突き刺さっていた。

「何故・・・私を・・・殺そうとするんだい・・・水銀燈?」

息も絶え絶えなローゼンが、最期の質問を水銀燈に振り掛けた。




37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:26:39.73 ID:WEnsP4mg0
「何故?貴方が諸悪の根源だからよ・・・」

「諸悪・・・私が・・・?」

「ドールズは・・・何よりもお父様に縛られていた。醜い殺し合いも、貴方が究極の少女を思い描いたから!!」

「な、成程・・・じゃあ、なぜ私が君をを殺すのかを教えようか?」

「・・・何でしょうか?」

「創造主に逆らうようなモノは・・・捨ててしまわなければ。そういうこ・・・!!」

ローゼンが喋り終わる前に、水銀燈は鋏でローゼンの体を真っ二つにした。

「さようなら、お父様」




38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:27:33.95 ID:MZNeYD+J0
やっちまったか・・・・・・




40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:30:05.10 ID:WEnsP4mg0
水銀燈は鋏の血を拭い、そのままその場にしゃがみ込んだ。

「く・・・」

背中に深々と突き刺されたナイフ。
どうやらローザミスティカの一部に達しているようだった。

(今は他のローザミスティカの力でどうにかなってるようだけれども・・・)

もし他のローザミスティカを失ってしまえば、水銀燈のローザミスティカは砕けてしまうだろう。
それでも・・・水銀燈にはやらなければならないことがあった。

「みんな・・・出てきなさい」

その言葉に一斉に水銀燈の周りにあるものが現れる。
メイメイ、ピチカート、スィドリーム、レンピカ、ホーリエ、ベリーベル。
姉妹たちの人工精霊だ。

「いい?私の体内にあるローザミスティカをそれぞれの持ち主に持っていくのよ」




41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:31:00.01 ID:MZNeYD+J0
なんてこったい




43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:34:10.98 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

「な・・・何だ?」

ジュンは驚いた。
パソコンのモニタから人工精霊が飛び出してきたからだ。

「ホーリエ!?久しぶりだな・・・」

ホーリエは何か言いたげだったが、一目散に真紅の鞄に近づく。
鞄を開けろと言わんばかりにピカピカと光る。

「鞄?ちょっとまってろ・・・」




44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:38:50.05 ID:WEnsP4mg0
ガチャ、と景気のいい音がする。
鞄の中には、動かなくなった真紅が眠っていた。

「ほら。でも、真紅はもう・・・」

急にホーリエの輝きが増す。
それはジュンも見たことのあるものだった。

「それ・・・ローザミスティカ!?」

真紅の体に、再びローザミスティカが取り込まれる。
ジュンは、無意識のうちにネジを手にしていた。




46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:43:37.89 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

「・・・!!」

メイメイはその場を慌しく飛び回る。
何かを必死に訴えているようだった。

「うるさいわねぇ・・・もうみんな行ってしまったわよ?アンタも雪華綺晶を探しに行きなさい!」

水銀燈が知るかぎりでは、雪華綺晶の人工精霊は存在しない・・・ハズだ。
だからメイメイに雪華綺晶のローザミスティカを運ぶよう命令した。

「ほら!いいからサッサといきなさぁい!!」

メイメイは観念したのか、雪華綺晶のローザミスティカを持ち、ふらふらとnのフィールドの見えない場所に消えて行った。

「・・・頼んだわよ、メイメイ」




47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:46:34.91 ID:WEnsP4mg0
水銀燈は全てのローザミスティカを失った。
最早立つこともままならない。何処にも力が入らないのだ。

「・・・ま、私にしちゃ上出来かしら?」

水銀燈は分かっていた。
もう自分の死が間近に迫っていることを。

「私の可愛い妹達・・・最期に一言、謝りたかったわぁ」

水銀燈は目を閉じる。
瞼の奥には自分を睨み付ける姉妹の姿があった。

「ふふ・・・仕方ないわね。酷いことばっかりやってきたから・・・」

この死に様も、今までの報いかもね、と笑う。
もう痛みも感じなくなっていた。




50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:50:24.11 ID:WEnsP4mg0
「水銀燈ー・・・!!」

(ああ、幻聴ってやつねぇ・・・)

「水銀燈!大丈夫!?」

(うるさいわねぇ・・・静かに死なせてくれないかしら)

「水銀燈!目を開けて!!」

「・・・真紅?」

幻聴ではなかった。
水銀燈の傍らには、真紅が居た。




51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:54:24.43 ID:WEnsP4mg0
「水銀燈、しっかりしなさい!」

真紅は水銀燈の背中を見た。
かなり深く刺し傷が入っている。

「これは・・・」

「真紅・・・しんくぅ・・・」

「何!?傷が痛むの・・・!?」

真紅は見た。
恐らく生まれて始めて見るその光景に、驚きを隠せなかった。

水銀燈が、泣いていた。




52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 21:57:45.72 ID:WEnsP4mg0
「わ、私・・・お父様を・・・」

「知ってるわ。殺したのでしょう?」

真紅はホーリエを通して全てを知った。
水銀燈がローゼンを殺した。
あれほど慕っていたお父様を、殺した。

「ゴメンなさい・・・ゴメンなさい・・・!」

「水銀燈、後で話は聞くわ。・・・帰りましょう」

「ダメなのよ・・・もう、ローザミスティカが砕けるわ・・・」

「そんな・・・!」




54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:00:56.11 ID:WEnsP4mg0

「真紅、聞いて」

水銀燈は最期の力を振り絞り、真紅に話を始める。
真紅は悟った。これは水銀燈の遺言になると。
真紅もまた、泣いていた。

「私はずっとこれを望んでいたの。お父様を殺して、私も死ぬ。これで姉妹はアリスゲームから解放される・・・」

「ローザミスティカを返したのもそういうワケだったのね・・・」

「そう。言ったでしょう?失うものなど、何もないと・・・現に真紅、貴女・・・復活したじゃない・・・」

「だからって!水銀燈が犠牲になる事は・・・!」

真紅は思わず叫んだ。





58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:05:21.54 ID:WEnsP4mg0
「いいの。お父様を殺したのは私の罪・・・運命だったのよ」

「でも、でも・・・」

「姉妹の幸せは私の幸せ。長女の役割なのよ・・・」

水銀燈は真紅の涙を拭おうとする。
・・・が、力が入らない。
水銀燈は死にかけの自分を呪った。

「いい、真紅?貴女達を捉えていた鳥篭は私が壊したわ」

「・・・鳥篭?」




61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:09:55.11 ID:WEnsP4mg0
「そう。薔薇乙女は鳥篭に捕らわれていた可哀想な飼い鳥・・・」

「でも今は違う。貴女達を縛るものは無くなった。・・・喜びなさい、自由なのよ?」

「自由かもしれないけれど、貴女が居なくなるわ!水銀燈!!」

「みんなの記憶に残ってる限り、私は生きてるわよ・・・なんて・・・ね・・・」

もうダメだ。
本格的に意識が途切れてくる。

「ああ、でも・・・一つだけ・・・やりたいことがあったわぁ・・・」

「・・・何?言ってみて・・・??」




63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:13:58.30 ID:WEnsP4mg0
「姉妹全員で・・・」

水銀燈の目から涙が止まらない。
もう果たすことの出来ない場面を想像して、少しだけ未練が生まれる。

「お茶会が、やりたかったわぁ・・・」

「わ、私もよ・・・、水銀燈・・・!」

「みんな、で・・・他愛の、ないことを・・・話して・・・」

「うん、うん・・・」

それ以降、水銀燈の口が開かれることはなかった。

「何よ。最後まで話しなさいよ・・・お願いだから・・・!!」

真紅の嗚咽だけが響き渡った。




65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:15:50.12 ID:X6isSi+CO
(´;ω;`)水銀燈…




66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:19:16.38 ID:WEnsP4mg0
――――・・・

「遅かったじゃない」

「待たせたわねぇ・・・先に行ってても良かったのに」

「だーめ。死んでも一緒だって言ったじゃない。水銀燈?」

「・・・そうね、めぐ」

「いきましょう!ほら、手を繋いでね?」

「わかったわよぉ・・・全く・・・」

恥ずかしそうにめぐと手を握る。
意外とまんざらでも無さそうだが。

そして二人は、光の向こうへと歩き出した。


進みなさい、私の可愛い妹たち・・・
私が手にする事が出来なかった自由の向こうへ・・・!

おしまい




67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:19:38.29 ID:kCQpQNdx0
水銀燈マジスイートハート




68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:21:33.02 ID:WEnsP4mg0
なかなか無いよねー、ローゼンが死ぬSS。
と言う事で書いてみた。

水銀燈がアリスゲームに固執する理由がこうだとどんなに嬉しいことか・・・
あ、姉妹は全員復活したよ?そうしないと後味悪いからね!

読んでくださった方乙っした!




69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:21:34.42 ID:jEhhdBklO





71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/16(土) 22:24:01.44 ID:Rd29tDODP
乙!

ありがちなほのぼの系SSのありがたみを再確認させられました






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コメント
この記事へのコメント
  1. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 09:23: :edit
    くそっ
    目から変な汁が…
  2. 名前: まならなま #-: 2009/05/30(土) 09:23: :edit
    一ぃ
  3. 名前: ハト #-: 2009/05/30(土) 09:28: :edit
  4. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 09:29: :edit
    水銀燈は私的上位じゃ無いんだけど、この水銀燈はいいねぇ
    そしてローゼンざまぁ、だな
  5. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 09:33: :edit
    これぞSSって感じだな
    うまくまとまってる
    ちょっち強引な所もあるけど、それでも十分良くできてる
  6. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 09:36: :edit
    一桁!
  7. 名前: d #-: 2009/05/30(土) 09:42: :edit
    1でし
  8. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 10:01: :edit
    おい21wwwww
  9. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 10:33: :edit
    泣いた

  10. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2009/05/30(土) 10:38: :edit
    きれいにまとめたな
  11. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 10:54: :edit
    SSに出てくるお父様の性格ってなぜかいっつも超三下だよねw
    たぶん本物はラプラスの魔千人分くらいの複雑怪奇な性格だと思うんだが…
    まぁそんなの素人に描けるはずないか。
  12. 名前: 通常のナナシ #mQop/nM.: 2009/05/30(土) 11:04: :edit
    アマゾン毎度面白いのひっぱってくるよなーw

    急展開だけどテンポよかったお
    ぷんたありがとう
  13. 名前: 名もなき名無し #-: 2009/05/30(土) 11:12: :edit
    最初の超展開でどうなることかと思ったけど、うまく纏められてて良かったよ。
  14. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 11:13: :edit
    14
  15. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 11:49: :edit
    目から鼻水ぅぅぅぅうう!
  16. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 11:53: :edit
    バスケでふいたwww
  17. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 12:02: :edit
    きれいにまとまったSSだった。
    作者、乙
  18. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 12:18: :edit
    ローゼンひでぇなwwwwまぁ姉妹で殺し合いさせるなんて狂ってるもんな
  19. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 12:27: :edit
    真紅がやられかけてる大事なところでまさか三井に吹かされるとは思わなんだ…
  20. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 12:56: :edit
    テンポよく読めたな
    多少強引だけど面白かったよ
  21. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 12:57: :edit
    こう考えるとローゼンって池沼なんじゃないかって思うな・・・
  22. 名前: 通常のナナシ #JalddpaA: 2009/05/30(土) 13:17: :edit
    ローゼンってこんなんだっけ?
  23. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2009/05/30(土) 13:20: :edit
    目から汗が・・
  24. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 13:23: :edit
    良かったです。
  25. 名前:     #-: 2009/05/30(土) 13:54: :edit
    >>21 
    評価はするけどやめろよw


    ジャンプのうちきり決まった漫画の展開っぽかったけど、上手くまとまってたので面白かった。
  26. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 13:56: :edit
    銀様が好きになりました…(;ω;)
    イイハナシダナー
  27. 名前: 通常のナナシ #- #qiOq5Fmk: 2009/05/30(土) 13:59: :edit
    久々のギャグの似合わないシリアスものだったのに、真紅の「バスケがしたいです・・・」で盛大にお茶吹いたw でもこれ見て思ったんだけど、ローゼンの本当の最終回はどうなるのだろうか・・・あまり考えたくはないが。
  28. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 14:14: :edit
    ん~…びみょ
  29. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 14:53: :edit
    21め。なのだわつけろw
  30. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 15:47: :edit
    うーん何この文章
    物書きとしてwktkさせられたんだが
  31. 名前:   #-: 2009/05/30(土) 16:20: :edit
    悪くは無かったけど
    アニメ設定の剣だの能力取り込みだのは使って欲しくなかった
    蒼星石のRMを漁夫の利ってところは原作通りなんだしアニメ設定必要ないだろ
  32. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 16:23: :edit
    >>11
    ローゼンはどうせ桃種ですらちゃんと描けなさそうなキャラだしな
  33. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 16:30: :edit
    ※11
    俺イメージではコードギアスのシュナイゼルみたいな感じなんだけど

    ※31
    激しく同意
  34. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2009/05/30(土) 17:08: :edit
    こういう役割与えられるのって、絶対水銀燈だけなんだよな・・・
  35. 名前:   #-: 2009/05/30(土) 17:10: :edit
    米34
    前に金糸雀がローゼン殺した話あったよ馬鹿
  36. 名前: 名無し #-: 2009/05/30(土) 17:15: :edit
    何この魔界塔士サガみたいな展開w
    チェーンソーで真っ二つですかw
  37. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 17:54: :edit
    このSSは感動した。
    とてもよかったです。
  38. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 17:59: :edit
    この水銀燈は素敵
    短く綺麗にまとまってていい話だった
  39. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 18:41: :edit
    急展開すぎてびっくらこいたが良い話だった

    蒼い子可愛いよ蒼い子
  40. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 19:31: :edit
    なんという急展開www
  41. 名前: 関西人 #-: 2009/05/30(土) 19:47: :edit
    ローゼンメイでんがな
  42. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 20:30: :edit
    急展開でびっくりしたが、素晴らしいものだった
    原作の銀様がローゼンの思想に操られてる側だからこそ映える話だな


    ※11
    正直桃種先生でも無理かもしれんぞ

    ※21
    何を今更
  43. 名前: 通常のナナシ #jWeOCmHw: 2009/05/30(土) 21:07: :edit
    水銀燈がますます好きになりました。・゚・(ノ□`)・゚・。
  44. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/30(土) 23:18: :edit
    なんか「彼岸の花は秋に咲く」を思い出した
    ラストのあたりで
    作者乙
  45. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 01:16: :edit
    切ないけど綺麗でいい話。拾い物だな。
    作者ぷん太乙。

    個人的にはもう少しボリュームがあってもよさそうに思うが、
    長ければ長いで不満も出るのかね。
  46. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 01:23: :edit
    原作の水銀燈と心理が似てて良かった。
    原作水銀燈は自分のこと嫌いだからなぁ。
    ローゼンが作った黒いドレスにも、心にダメージを受けてるみたいだし・・・。

    ローゼンざまーみろ!
    とにかく、乙
  47. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 01:32: :edit
    話変わるけど、原作のローゼンの正体って、
    ローゼン(魂)、ラプラスの魔(精神)、桜田ジュン(肉体)の三つが合わさったものって本当かな?

    錬金術の基礎からして充分ありえそうなんだが。
  48. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 02:09: :edit
    確かに急展開だったなw
  49. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 02:23: :edit
    ※47
    肉体、魂、精神の三原則って、ハガレンであったな。
    でも、なんで肉体がJUMなんだ?
  50. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 02:30: :edit
    久しぶりにSSで涙した
    ラストにめぐと会えたところも救いがあってよかった
  51. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 13:32: :edit
    水銀燈が好きになった…
  52. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/05/31(日) 22:57: :edit
    ※49
    >>でも、なんで肉体がJUMなんだ?

    マエストロの腕は肉体が覚えていた物、
    ドールズにやたら懐かれるのも…
    という解釈か。
  53. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/06/01(月) 01:19: :edit
    銀「いくぞローゼン!!ウオオオオオ!!!」
    ロ「さあこい水銀燈!!」
    みたいなネタSSかと思いきや
    ちゃんとしてましたごめんなさい
  54. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/06/02(火) 19:13: :edit
    >>35
    殺した話は知らんけど、
    ただ一人真実に気付いた金糸雀があえて真実を語らない事でローゼンを嵌めた話があったな。
  55. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/06/03(水) 14:14: :edit
    ※52
    あの技術はローゼンだった頃の名残か。
    バーズ版でいろいろ複線があったが・・・。やっぱり、JUMはほかのマスターとは違うもんなぁ。
  56. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/06/04(木) 23:47: :edit
    原作でローゼンの真実が明かされたとき、ローゼンざまぁした奴が勝利するのか銀様の怒りをかうのか・・・
  57. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/06/05(金) 17:44: :edit
    きれいなSSでした。

    作者&ぷん太乙!
  58. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/08/06(木) 17:55: :edit
    え~ん感動もの~~~
  59. 名前: #: 2015/02/02(月) 00:27: :edit
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