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佐々木「バレンタイン……か………」その1

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2009/03/13(金)
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:30:56.87 ID:mmUOuQd00
佐々木「やぁキョン。ご無沙汰だね」

佐々木「驚いたかい?北高の知人に頼んで制服を借用したんだ」

佐々木「さすがにさほどのマンモス高ではないここの校舎内では、部外者である僕に奇異な視線を向ける人も何人かいたけどね」

佐々木「えっ、それは別の意味を孕んだ視線だって?……くっくっ、いつから君はそんな気が利いたことが言えるようになったんだい?」

佐々木「それにしても、これが君たちの部室とやらか」

佐々木「建物自体はやや古めかしさを感じるものの、PC、冷蔵庫、コンロ、暖房、本にボードゲーム……」

佐々木「五人程度でくつろぐには申し分ない装備は揃っているね。君たちがどういう過ごし方をしているのか、手に取るようにわかるよ」

佐々木「あはは、この衣装なんてどういうときに使うんだい?」




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:33:13.90 ID:mmUOuQd00
佐々木「しかし……」

佐々木「仮にも僕と親友の杯を交わした君が、卒業と同時に電話一本寄越さなくなるとは思っていなかったよ」

佐々木「くっくっ、冗談だよ。今日はそんな些末な愚痴をこぼしにきたわけじゃないんだ」

佐々木「君だって一日本人であり一男児でもあるんだ」

佐々木「まさかこの2月14日という日が何を意味するか、知らないわけじゃあるまい」

佐々木「本来ならば日本とは縁もゆかりもない、セント・ヴァレンティヌスの殉教の日であってね」

佐々木「それに託つけて、仮にも仏教国であるこの国でチョコを売りさばこうなんていう商魂逞しさには、全く頭が下がるよ」

佐々木「それにまんまと乗せられて大騒ぎできるほど素直な僕じゃないということは、君も知っての通りだろうけど」

佐々木「この文化に賛同できる部分もあるんだよ。贈り物に想いを寄せて、男女が親交を深めるという……」

佐々木「それは何も恋仲である必要はないんだ。例えば、親友……という仲も、あるだろうさ」




8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:34:42.00 ID:mmUOuQd00
佐々木「朴念仁な君でも、さすがに気付いたかい?といっても、商業戦略の歯車になるのは、やはり僕には抵抗があってね」

佐々木「要は想いが伝われば、チョコレートなんてのは残り滓に過ぎない訳だ」

佐々木「そこで、だ。僕なりの折衷案というものを提供しに来たんだよ」

佐々木「分かってる、君の周囲には君にチョコレートをプレゼントするであろう女性が、数多く存在することはね」

佐々木「これはお恵みなんかじゃあない。僕の……真摯な想いだ」

佐々木「ちょっとあちらを向いていてくれるかい?」

佐々木「そして……聞いてくれ」

佐々木「もう……限界なんだ。君の顔を久しぶりに見たとき、もうダメだと実感した」

佐々木「君の親友でいる資格を、僕はとうの昔に失っていたんだ」




9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:35:57.41 ID:mmUOuQd00
ブリッ!ブババババッッ!ブリュビュルリュリュッ!

佐々木「僕は……ううん、わたしは……ずっと前から……ずっとずっと前から……キョンの……ことが……」

ブリブリブリブリッッ!!プシャアアーーッ!!

佐々木「好き……だったの……!!」

ムリムリイッッ!!ブチュブチュッッ、ミチミチミチィィッッ!!!

佐々木「ふぅ……もういいよ。さて、このチョコレートをどうするかは、君に委ねる」

佐々木「食すのも、他の使い方をするのも、破棄するのも……君の自由だ」

佐々木「ただ……もし破棄するというならば、僕がこの部屋を出てからにしてくれるとありがたい」




10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:37:12.42 ID:mmUOuQd00
佐々木「じゃあ、用件は済んですっきりしたから、僕はもう………あっ…………」

佐々木「キョンが…………食べてる…………僕がひり出したチョコレートを……脇目もふらずに……食べてる……!!」

佐々木「それが……君の……答え……なんだね……?」

佐々木「キョン……うぅ……キョン……」

佐々木「本当はずっと……後悔してたんだ。君と違う高校に入ったことを……」

佐々木「涼宮さんの話をするときの君が楽しそうなのが、たまらなく憎くて……」

佐々木「好き、大好き。世界中の誰よりも、キョンのことを愛してる……」

ギュッ

佐々木「もう二度と・・・離さない・・・・・・」




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:37:47.59 ID:wFlRAXOF0
これはひどい




12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:39:01.92 ID:gdv2AWnuO
泣いた




13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:39:58.54 ID:OtMsEPGp0
俺はとんでもないものを見てしまった気がする




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:41:12.61 ID:UMllZmLb0
バタンッ

ハルヒ「みんな!待たせたわね!!……って、なにこの臭い……」

佐々木「あんっ!んんっ!は、激しすぎるよぉ……!!」

ハルヒ「!?」

ハルヒ(落ち着け……クールになるのよ涼宮ハルヒ……あなたは氷のように冷たい女……)

佐々木「ひぃっ!いやっ、奥まで来てるっ!ぅんっ、あっ……」

ハルヒ(かの物理学者は言ったわ。どんな複雑に見える事象も、いくつかの原理的な法則を順に適用すれば簡単に解明できる、と……)

ハルヒ(まずここがSOS団本拠地であることは間違いないわね。冷蔵庫、CRTディスプレイ、そしてみくるちゃんの衣装……これをそっくり模倣した空間は、偶然にはできっこないわ)

ハルヒ(……まあ、違う部屋だったとしても、大した解決にはならないんだけど)




17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:42:27.90 ID:UMllZmLb0
佐々木「えぇっ、ちょ、そんなとこ、汚いよぉ……」

ハルヒ(そして次に、私の目の前で観測できる光景)

ハルヒ(部屋からは異臭がして、キョンと……みくるちゃんでも有希でもないわね、見知らぬ北高生が豪快な後背位ファックを決めているわ)

ハルヒ(これらを整理すると、こういうことになるわね)

ハルヒ(ある日部室に入ると、異臭の中で部員が部外者と激しいファックをしていました。)

佐々木「くぅ……ん……気持ち……ぃぃ……」

ハルヒ(お、そんなに珍しいシチュエーションじゃないかも……)

ハルヒ(それにこの異臭は、どうみてもあそこでとぐろを巻いてるチョコレートが原因だわ)

ハルヒ(しかもよくみると、あれはアナルファックね。下付きのあたしでも、あんなところにおまんこはついてないもの)

ハルヒ(どんどん見えてきたわ!つまりキョンはスカトロアナルファックをしているのね!)




20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:44:07.09 ID:UMllZmLb0
ハルヒ(あとは……相手の子だけど……)

ハルヒ(そう言えばどっかで見たことあるわね……たしか……)

ハルヒ「佐々木……さん?佐々木さんじゃない!」

佐々木「涼宮さんっ……おひさっ……しぶりっ……」

ハルヒ「なんだ、佐々木さんとのアナルファックかぁ。これで謎は全て解けたわ。めでたしめでたし」

ハルヒ「って、んなわけあるかぁっ!!!」

ハルヒ「何してんのよあんた達!ここはあたしのテリトリーよ!」

佐々木「なにって……うっ……アナル……セックス……」

ハルヒ「それは既に解明した謎よ!私が聞いているのはそれ以前の経緯というか、なんていうか……」

佐々木「しかも……んっ……チョコ…搾りたて……」

ハルヒ「あの……せめて腰の動きを止めませんか……?」

佐々木「だって……っ!こんな気持ちいいの……止まんない……よぉ……ぁあっ!!」




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:44:40.44 ID:XDxqry9c0
こんなに冷静で知的なハルヒを見たのは初めてだぜ




23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:46:03.38 ID:UMllZmLb0
ハルヒ「……キョン。ここに洗浄したての肛門があるわ」

ハルヒ「内壁にチョコのこびりついた佐々木さんの肛門と、奥までまっさらな私の肛門。選ぶまでもないわよね?」

ハルヒ「さ、分かったら動きを止めなさい」

ハルヒ「今ならあんたがアナルにしか興味がないこと、古泉くんには秘密にしといてあげるわ」

佐々木「ふふっ……」

ハルヒ「何がおかしいのよ?」

佐々木「人は、必ずしも清潔を愛さない……ということを、ご存知ないかしら?」

ハルヒ「そんなはずないわ!人は防疫本能として清潔を好むのよ!さぁキョン、はやくこっちに来なさい!!」




28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:48:00.40 ID:UMllZmLb0

佐々木「人間は万物の尺度である……とは、プロタゴラスの言葉……だったかな」

佐々木「例えば公衆の洗面所のコップ。水で簡単に洗浄できるのに、使いたがらない人も多い」

佐々木「でも、愛する者と粘膜を触れさせあい、唾液を交換するのを躊躇する人はいない。こんな風にね」

ちゅ……くちゅ…

佐々木「つまりそこに愛があるならば、大便もまた甘く香ばしいチョコレートに変わる……というわけさ」

佐々木「そんなに清潔がいいと思うなら、アナルに使い捨てのオナホールでも突っ込んでればいいじゃない」

佐々木「生きながらにしてダッチワイフなんて、ビッチのあなたにぴったりだわ!あっはっは!!」

ハルヒ「……なんであたし、人の部室でウンコまき散らしてる女にボロクソ言われてるの?」

佐々木「クソだけにねっ!」

ハルヒ「やかましいわっ!」




31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:51:20.98 ID:UMllZmLb0
ハルヒ「とにかく、そっちがその気ならこっちだって考えがあるわ」

ハルヒ「有希、みくるちゃん。佐々木さんをレイプしなさい」

みくる「いえす、さー」

長門「処女はわたしが貰う」

みくる「だ、ダメですよぉ!半分こですぅ!!」

佐々木「え……ちょ、やめ、ガチレズだけは、アッー!」

ハルヒ「さ、この隙にキョン、あたしとセックスしなさい……って……これは……人形!?」

佐々木「ふ……バレてしまっては仕方ないわね……わたしがアナルセックスをしていたのはただの人形だったの……」




32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:53:10.97 ID:UMllZmLb0
ハルヒ「それもよく見たらケンタッキーの店先にあるやつじゃない!」

ハルヒ「どうりで喋らないと思ったわ。本物のキョンをどこへやったの!?」

長門「彼は今日、学校を欠席している」

みくる「風邪って言ってましたよぉ」

ハルヒ「ああ、そういえばそうね」

ハルヒ「……」

ハルヒ(じゃあ、佐々木さんってうちの学校に一人で侵入して、誰もいない部室でウンコしてアナルオナニーしてたの……?)




33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:54:32.97 ID:mfzRwU/uP
カーネルサンダースとジョンスミスって似てね?
似てねーよwwwww




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:54:39.49 ID:AXPNNdCv0
ケンタッキーの人形とキョンは違いすぎるだろwwwwww




37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:57:59.18 ID:UMllZmLb0
みくる「まあ立ち話もなんですし、4Pでもしましゅか」

長門「そうする」

ハルヒ「そ、そうね!佐々木さん?あたしはケンタくんほど優しくはないから、そこんとこよろしく!」

佐々木「くっくっ……お手柔らかにね」

こうして、女たちの宴はいつまでも続くのでした……




39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 14:58:53.86 ID:mfzRwU/uP
投げんなwwwwwwwwwwwwwwwwww




40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:00:21.58 ID:EqcnC7MuO
( ゚д゚ )




42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:07:21.89 ID:p6+WEsV3O
だれか>>8からの続き書いてくれ




43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:07:22.48 ID:N0j/ERKr0
とにかく盛大に吹いたwww



※書き手さんがかわります

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:11:56.41 ID:X5hYErD7O

「……言ってる意味がわからないな」

 咄嗟に嘘をついた。
この状況、佐々木の普段見せない紅潮した表情。
2月14日。バレンタイン。俺と佐々木。男子と女子。微かに香る甘い匂い。
誰でもわかる構図だった。

「…キョンは、嘘をつくのが昔から下手だったね」
「…そうか?」




47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:24:00.00 ID:X5hYErD7O

 白を切る。こういう腹芸スキルはハルヒのおかげでかなりあがったと思うのだが。
聡明で付き合いの長い佐々木には一目瞭然なのだろうか? 多分そうなのだろう。
わかって嘘を俺はつく。片っ端から看破される感覚が居心地良い。

「ねぇキョン」
「なんだ? そろそろハルヒ達も来そうだが見られてもいいのか?」

 話を逸す。逃げて知らん振りをして逸して、でもそれすらもきっと佐々木の予想通りで、静かに微笑んでいた。

「まったく、君は成長しないね。変わったのに成長はできてないなんて、本当に君らしいよ。でも、僕も多少焦る位はするよ?」

 女心の事に関する鈍さは成長どころかさらに磨きがかかってるね。
と佐々木はくっくっくっと小さく笑う。
誰も居ない部室にそれがやけに響いて聞こえた。




53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:36:51.95 ID:X5hYErD7O

 ひとしきり笑うと佐々木は嘆息し、俺の目をじっと見つめる。

「さて、確かに部外者である僕がこの場に居続けるのは良くない。それに僕はそんなこと無いが、涼宮さんは僕のことを好いてないようだしね。そろそろ目的を果たしてお暇しようかな」

言って、ずいっと俺の眼前5cmにまで顔を寄せる佐々木。
長い睫毛に桃色の唇、それに頬紅を塗ったかのような頬に俺はくらくらする。

「はいキョン、これをあげよう」




55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:44:09.28 ID:X5hYErD7O

 先程から漂っていた甘い香りの発生源と思わしき四角い箱。
青い、花柄の可愛らしい包装紙で包まれ、ピンクのリボンが結ばれたそれは、多分佐々木の器用なその細い指先によってほどこされたのだろうことは想像に難くない。

「これがなにか、なんて聞かないでくれよ?」
「あぁ…、ありがとな佐々木」
「……君は愉快にも不愉快な勘違いをしてるようだから言っておくけどねキョン。それは僕の手作りでたった一つの本命だ」

 佐々木は最後にそう言い残して、部室を足早に去った。




59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 15:59:36.01 ID:X5hYErD7O

 残された俺は、部室の入口で佐々木から渡された箱を持って硬直していた。
本命、それがなにを意味する物なのかはいとも簡単に理解できる。

 ノックが俺の思考を遮り、俺はその状態のまま箱を隠すこともなく。
「…どうぞ」と言った。

「おや、あなただけですか。珍しいですね……、っとそれはチョコですか? 羨ましい限りです」

 似非笑顔の古泉が入ってきて、愉快そうに話しかけてくる。
そこでようやく俺は我に帰り。ハルヒでなく古泉で助かったと胸をおろしながら、箱を鞄に隠すように仕舞い込む。いまは佐々木に対する返事は忘れるべきだ。
っていうか古泉、お前なら本命チョコの一つや二つ当然貰ってるのだろうが。
羨ましいだと? 舐めてんのか。

「いや、そんなことはありません。確かにいくつかチョコはいただきましたが…、拳を握らないでください。どうも。…こほん、確かに貰いましたがそれはあくまでも他人です。僕の外見に対するチョコですよ。あなたのそれはそうではないでしょう? だから羨ましいのです。しかし涼宮さんもなかなか積極的ですね」




62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 16:09:45.63 ID:X5hYErD7O

 古泉は、自分の椅子に座りながら身振り手振りを交えて語る。
合わせて俺も鞄を引き寄せて自分の指定席に座る。ふぅ、人心地がつく。
だが古泉、一つ勘違いしてるようだがこのチョコはハルヒに貰った訳じゃないぞ。

「おや失敬、ではどちらから貰ったんでしょう。朝比奈さんですか? それとも長門さん?」

 先刻までの笑顔に影が差しやや顔つきが真剣になる古泉。
残念だが連続不正解だ。

「……では阪中さんや鶴屋さんですか? まさか意表をついて喜緑さん?」

 違う、と言うか何故そんなに俺のチョコの創造主をそんなに知りたがる?
顔を近付け過ぎだ馬鹿者。

「これはすみません。しかし、これは割合マジな話ですよ。素直に答えてください、そのチョコは誰から受け取ったんですか?」

「……佐々木だが」




67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 16:26:02.40 ID:X5hYErD7O

 古泉の態度は不審と表すに足るものであったが、
しかしさして隠すことでもなかったので素直に言ったのだが。
チョコを寄越したのが佐々木と知るや否や古泉は頭を抱えだした。

「おい古泉どうした?」
「…どうしたじゃありませんよ、あなたはわからないんですか?」
「なにがだ、毎度の事だがお前はまだるっこしい。共感を得たいならわかりやすくかつ簡潔に話せ」




70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 16:39:07.34 ID:X5hYErD7O

「あなたが佐々木さんにチョコを貰った事を知って涼宮さんがどんな反応するかを考えてみてください」
「あぁ、そういうことか…」

 確かに部室に部外者を入れた事にあいつは不満を言うだろうし。
それが佐々木となれば閉鎖空間の一つもできる…、か?
まぁハルヒが佐々木を好ましく思ってないのは流石の俺も感じてるしな。ま、黙ってればいいだろ。

「あなたって人は…、つくづくお気楽な人ですね」

 どういう意味だ。

「そんなことを言ってる訳じゃないんですよ。わかってるでしょう?この場合問題なのは、むしろ誰にでもどこででもなく、誰が、が問題なんですよ」

 俺がチョコを誰かに貰ったと言う事がハルヒの機嫌を損ねると言いたいのか?

「その通りです。この場合の誰かとはSOS団以外の誰か、となります」

 ふざけるのも大概にしてもらいたいね。

「ふざけてはいません。実際、僕が佐々木さんにここでチョコを貰った所で彼女精神には欠片も影響を及ぼさないでしょうね」




75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 16:53:01.21 ID:X5hYErD7O

「とにかく、受け取ってしまったものは仕方ありません。そこはあなたの言ったように隠し通してください。しかしこれ以降、今日中にチョコを渡されそうになっても決して受け取らないでください、……言ってる意味はわかりますね?」

 わかるかそんなこと。
相思相愛の彼女相手ならともかく、なにが悲しくてハルヒのおたんこナスの機嫌を気にしてチョコを断ったりしなくてはならんのだ。
全身全霊お断りだ。
お前には悪いがそこまで俺はハルヒのために自己を犠牲にするほどハルヒ教信者じゃないんだよ。

「……でしょうね」

 諦めたようにため息をつく古泉。
おいおいそう疲れた表情するなよ、こういう時こそチョコだぞ。
友チョコとして板チョコやるから元気だせ。

「これはどうも、…とにかくあなたは佐々木さんから貰ったチョコは隠し通しこれから来るであろう彼女達女性陣からのチョコを受け取り。涼宮さんの機嫌を損ねないようにしてください」
「あいよ」

 その程度なら俺も芝居をするさ、妥協案って奴だ。お互いにな。




76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 17:01:12.37 ID:QeQ1VBkI0
古泉うぜぇな




78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 17:03:43.21 ID:X5hYErD7O

 話が終わってから。
俺と古泉は女性陣が来るまでカードゲームに興じた。
第一試合を俺の快勝で終え。続く第二試合ももうすぐ俺の白星で飾れそうになった頃に

「お待たせー! いやぁ遅れちゃってゴメンね古泉君」

 騒々しい団長以下二名の到着となった。
ハルヒはなぜか古泉にだけ待たせた事を詫びて、ズカズカと団長席に座りパソコンの電源を入れる。
こんな奴が俺のチョコの如何を気にするとは毛頭思えんのだがな。

「いえ、僕達も先程きたばかりですよ涼宮さん」
「あら、それはよかったわ。ほらみくるちゃん、お茶淹れて頂戴!あっ、ちゃんと着替えなきゃダメよ」
「はい、わかりました~」

 という事で俺と古泉はカードゲームを手早く片付けて、一旦室外に退散する。




86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 17:22:41.99 ID:X5hYErD7O

 2月14日。それはまだまだ寒い冬真っ盛りであり。
いままで比較的温かかった部室からいきなり廊下にでれば、息は白く凍り付き、肌が粟立つ気温一桁。
衣擦れの音が聞こえてしまわぬように少し離れた位置でたたずむ俺達は明らかに凍えていた。

「先程の話ですが」
「まだなんかあるのか?」
「涼宮さん、今朝から様子はどうでした?」

 こいつはなんなんだ。
こんどは朝からのハルヒの調子? そんなのを聞いてどうするのだろうか。

「別にいつも通りだったぞ」
「いつも通り、ですか」
「あぁ」
「おかしいとは思いませんか?」

 お前はこの誘導尋問のような、曲がりくねった会話の起こし方を一度矯正した方がいいな。
もっとわかりやすく話せ。もしくは話したい事を箇条書きにして書き起こせ。

「そう言わないでください。さっきのは謝りますから」
「…わかったから顔を近付けるな」
「すみません。で、涼宮さんです。あんなにイベントごとに敏感な彼女が朝からそれを匂わさずいつも通り。おかしいですよね」
「恋愛沙汰が嫌いだからなあいつは、さっきのお前の言ってた女性陣からのチョコも怪しいもんだぜ? 何事もなく終わりそうだな」




98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 18:11:21.62 ID:X5hYErD7O
 古泉は俺がそう言うと眉間に似合わぬ皺を少し寄せた。

「…そうではないですよ。仮にそうだとしたら涼宮さんはバレンタインと言う日そのものになんかしら発言しそうなモノです。もしくはまったく方向性を変えた、自分も楽しめるイベントを発案するでしょう」

 ……確かにな。節分なんてあんな面白みのないイベントですら。
あんなに腹にたまる祭りに変えたハルヒだからな。

「なのにあえてまったく触れないと言うことは、本人が無意識にもこの日を意識してるという事でしょう」




99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 18:23:58.10 ID:X5hYErD7O
――

「はい、どうぞキョン君」

 天使級メイドにクラスチェンジした朝比奈さんからお茶を受け取り、礼を言って一口啜る。あぁ身体が暖まる。

 そして古泉が動かした桂の意図を読みながら、ハルヒを横目で盗み見る。
朝比奈さんのお茶を一気に飲み干して椅子にあぐらをかくあいつは古泉の言うような感じは見れなかった。

「長考ですか?」
「将棋、の事じゃないがな」

 盤に視界を戻して歩を進める。将棋の指し筋には性格がでる、古泉は些か消極的、保安的なきらいがある。それを知ってるのも古泉の言う事を素直に受け取れない理由かもしれない。




104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 18:30:40.49 ID:X5hYErD7O

 ……まぁ別に俺はハルヒのチョコが欲しくてたまらない訳じゃないので、貰えなくても構わないのだが。できれば朝比奈さんから貰えたら嬉しいなとは思う。

「…今日はよく考えますね」
「誰のせいだ」




107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 18:51:41.21 ID:X5hYErD7O

 その後、朝比奈さんのお茶を何度もおかわりしながら、ハルヒや古泉と雑談を交わし。
将棋にチェスに碁にと連勝を重ねて。
たまに長門をぼんやり眺めたりしたりと、別段なにもない日常を謳歌して。

 夕陽が部室をオレンジに染め上げ、暖かげな光が眼に眩しい頃。
長門が本を大きく音をたてて閉じた。
いつもより少し早い気がした。




112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 19:12:15.54 ID:X5hYErD7O

「じゃあそろそろ解散しましょう」

 いけしゃあしゃあとそう言い放つハルヒ。
ふん、確かにここまで無関心を装っていると、逆にわかりやすいな。
古泉に言われたからかも知れないがな。




117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 19:51:32.41 ID:X5hYErD7O

 やっていたゲームのシートを片付けていると側頭部にハルヒの視線が刺さる。
はいはい、気付いてないですよ。貰えなくて残念ですよ。

「こほん…」

 俺の大根芝居になにを思ったのかは知らないが、ハルヒは普段なら考えられない
ひどく控え目な咳払いを一つついた。

「さて、古泉君。今日がなんの日だか知ってる?」
「いやはや、僕にはわかりかねます」

 白々しい笑みでよくもまぁ。




134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 21:01:05.51 ID:X5hYErD7O

「まったく、古泉君も迂闊ね。女の子が可哀相よ?いい? 今日はバレンタインデーでしょ!」

 鬼の首を取ったかのような、晴々とした表情で宣言するハルヒに俺は危うく吹き出しかけ、無理にこらえた結果喉を痛めた。

「まーね、古泉君はともかくキョンは特に無縁だしね、SOS団の団長としてはそんな団員に対して施しをしないと思う訳よ。だから二人に私達からチョコのプレゼント、ありがたく食べてホワイトデーにしっかり返しなさいよ!」

 立て板に水の如く喋るハルヒに、苦笑と同時に素直な笑みも浮かぶ。
やはりなんだかんだ言っても貰えるのは嬉しいし、必死なハルヒは……少しは可愛かった




141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 21:41:39.62 ID:X5hYErD7O

 ハルヒは、その後一人百面相をした後に、「はい、義理」とぶっきらぼうに古泉と俺に四角い箱を一つずつくれた。

「みくるちゃんが材料買って来て、有希の家で作ったのよ。その中に入ってるから、どれを誰が作ったか明日聞くからね?」

 意地悪そうな笑みを浮かべて朝比奈さんと長門と無理矢理肩を組むハルヒ。
どれを誰が作ったか当てろ…、か。存外簡単そうに思うのだがね。

「涼宮さん、ありがとうございます。美味しく頂きますよ」

 古泉が腹の立つ柔和な笑みで礼を言い、俺をチラと見遣る。
…わかってる。

「あーハルヒ」
「あん? なによ馬鹿キョン、ホワイトデーは三倍返し。絶対に負けないわよ?」

 そうじゃない、お前にホワイトデーの金額をどうこう言ってもしょうのない事なのは重々わかっている。

「ありがとう、な。チョコ、大事に食うよ」
「へ? あ、うん。…そうしてちょうだい」
「朝比奈さん、ありがとうございます。長門もありがとう。二人がどれを作ったか。絶対に見抜けると思う。二人ともホワイトデー、楽しみにしててな」

 芝居じゃなくて素直に口をでた言葉だ。
谷口に見せてやりたい気分だ。




146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 22:29:03.37 ID:X5hYErD7O


 予想外の反応とばかりに、ハルヒは頬を掻き。
 朝比奈さんは感極まって俺に抱き付こうとしてくる。
 長門は、その黒目がちな瞳をこちらに向けてじっと俺を見つめている。
三者三様のその対応に俺はまたも苦笑を見せつつ、しかし現状をうまく切り抜けて安心した頭は、すでに佐々木のことを考え始めていた




154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 22:54:54.18 ID:X5hYErD7O
 それじゃまた明日、もし誰がどれを作ったか間違えたらホワイトデーは100倍返し。
とハルヒの声を背中に受けて、部室からでる。

「いやぁ、名演技ですね。あなたの台詞は聞いていて恥ずかしくなりましたよ」
「やかましい」
「……で、どうするんです?」

 冷える廊下、マフラーをキツくしめて古泉と二人帰る。
朝比奈さんは着替え、ハルヒは戸締まり、長門は……なんとなく一緒に部室に残っている。

「なにがだ?」
「佐々木さんの方ですよ」

 またその話か? もうハルヒとも別れたし関係ないだろ。

「そうは行きません、彼女の精神状態が安定してるのはいまだけかもしれません」

 どういうことだ。チョコの制作者問題か?
間違えるとは思ってないぞ俺は。

「えぇそれもそうです。が、それよりも問題なのは佐々木さんの告白に対してあなたがどういう反応をとるかですよ」
「…おい、お前はなにを」
「だてに人間観察を日々行っていませんよ。そのあなたが貰ったチョコが本命であり、あなたがそれを自覚してるの位はわかります。……と言うのは嘘でいま確信しましたが」

 この野郎…。
まったく笑顔でなにしてくれてんだ。性質の悪い詐欺師みたいな真似を。




156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 23:12:07.29 ID:X5hYErD7O

「ははっ、そう言わないでください。僕もこんな行動を好きでやってる訳ではありません」
「……で、そんな好きでもない行為を行ってまで言いたい事とはなんだ?くだらない事だったら殴るからな」

 カンカンと渡り廊下を歩きながら拳を握って見せると、古泉は慌てて手を振り笑う。

「えっとですね。話は明快です、佐々木さんを振ってください」

 笑顔で古泉はそう言った。俺は黙って歩みを止める。

「佐々木さんと付き合うようになったら、当然その内涼宮さんの耳にもそれは入ります。そして付き合う理由が今日、チョコを貰ったからで、それをあなたが隠していたとわかれば当然涼宮さんはショックを受けます。付き合ってる事と嘘をつかれた事で二重にね」

 俺は黙っていた。
なにかを口にしたら、……なんだろうよくわからない。

「涼宮さんは少なからずあなたに好意を抱いてあます。しかし性格上素直になれず、あなたが佐々木さんと付き合うことを言葉の上では応援するでしょう。それは大きなストレスとなり、巨大な閉鎖空間を発生させる、だからあなたには佐々木さんを振っていただきたいのです。これも世界のためです」




162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 23:29:36.42 ID:X5hYErD7O

 思わず。と言うかもはや反射的とも言える勢いで、
俺は古泉の似非笑顔の頬を思いっきりぶん殴っていた。

「言ったぞ、くだらないことを言ったら殴るとな」

 古泉は受け身もとらず、ずしゃっと地面に勢いよく倒れこむ。
その勢いに気を削がれそうになるも、止まらない。息は、荒い。

「つまりお前は、俺に、ハルヒの馬鹿な思考に怯えるお前達に付き合って、たった一人の親友を、一言の元に切り捨てろと、言うのか?」
「つぅ…」
「答えろ古泉、ハルヒが比較的俺を好いてるからと言う理由で、俺から自由を奪い、拘束し、ハルヒに縛り付けるのか」

 誰もいない学校の渡り廊下。
俺は倒れ伏せる古泉を引き上げ問詰める。

「……えぇそうです。パイロンの言葉の逆転ですが、あなた一人の自由のために我々は世界を失う訳にはいかないのですからね。これはお願いではありません。佐々木さんを振ってください」




164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 23:32:56.58 ID:X5hYErD7O
三角コーンじゃない
バイロンだった




165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 23:39:35.06 ID:bIBcBBUv0
>>164
シリアスなのに吹いたwwwwwwwwww




168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/21(土) 23:46:08.52 ID:X5hYErD7O

「却下だ。佐々木に対しての返答は俺の自由意思で行わせてもらうお前達の機関と友好関係になった覚えもない、そんなことでハルヒが閉鎖空間を作ろうが俺には知った事じゃねぇ。お前達一般人外があくせくしてろ」

 膝をつき、俺に引っ張りあげられてる古泉を突き飛ばし。
俺はハルヒや朝比奈さん達が追いついてこないうちにと早々にその場を去る。
ボケットから携帯をとりだし、電話帳の一つに電話をかけながら。





「もしもし、明日会えないか? 佐々木」




172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 00:00:33.32 ID:HfL57IcTO
「キョン君おかえりー!」

 帰宅直後に腹部に愛しい妹が全身で体当たりをかましてきた。
兄としては避ける訳にもいかず甘んじてそれを受けて、ようやくただいまの一言を告げる。

「キョン君、チョコもらったー?」

 それが目的か妹よ。

「ん、一応」
「誰からー? ハルにゃん? みくるちゃん? 有希?」
「全員から」
「へー……、頂戴!」
「ダメだ」




173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 00:06:30.87 ID:HfL57IcTO

 ケチー、ケチー、と騒ぎ立てる妹をなだめて自室に戻る。

「…はぁ」

 チョコの他に中身のない鞄を机に置いて、ベットに腰掛ける。
やたら今日は疲れた気がする、原因はわかりきってるが…。
制服も脱がずにそのまま横になり、天井を眺めつつ今日の出来事を想起していく。




179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 00:26:06.05 ID:HfL57IcTO

 佐々木が北校の制服を着て部室にいて、俺に本命だと言ってチョコをくれた事から始まり。
俺になすがままにされる古泉の姿までが一気に浮かび、消えていった。

「…さて、と。もらったチョコを開けて見るか」

 どうにもまだ頭が冷静になりきれてなく、古泉に対してさらになにかをこの場で吐き捨てようとする俺を見つけて、慌てて思考を逸す。

 鞄から小さな箱と大きな箱を一つずつ取り出す。
まるで玉手箱のようだと、少し思った。ならば俺はこの場合どちらを選ぶのが正解なんだろうか?
大きな方はハルヒ達三人の箱、束縛と引き換えに世界の安定を。
小さな方は佐々木がくれた箱、自由と引き換えに皆との距離を。

「……」

 どちらを選ぶか? と言われれば迷う。
俺は決してハルヒ達側にいるのが嫌な訳じゃない。断じて違う。
ただ強制されたくない、それだけなんだ。佐々木と付き合って、平日は部室でハルヒと遊び。
不思議探索のない休日は佐々木とデートしたり、そういう事をなぜしてはいけない?
なぜハルヒのもしかしたらに恐怖して、自分を制限しなくちゃいけないんだ?


 俺は欲張りなのだろうか?




184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 00:37:27.91 ID:CJZxi8mAO
この状況はキョンは勿論古泉も辛いよなぁ…
どちらにも同情しつつ支援




185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 00:40:40.92 ID:HfL57IcTO

 しゅるりとリボンのほどける音。
 結局俺が先に手をつけたのは、佐々木の箱だった。
青い包装紙を可能な限り丁寧に剥がしていくと、甘いチョコの香りが強く漂う。

 そっと机に置いた箱のふたを開けて中を確認して見ると。
佐々木らしいというか、本命だと言っていたのにハートやLoveなどの文字は欠片も見受けられず。
代わりに非常に手の込んだ、力作である事が伺えるトリュフチョコがいくつも詰まっていた。
俺は佐々木の万能さに感嘆しつつ、一つを口に運ぶ。

「あま…」

 そのチョコは非常に甘く、柔らかく、優しい味がした。
と、ふたの裏にこっそりと隠れるように貼られたメッセージカードを見つけた。





195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 01:11:04.96 ID:HfL57IcTO

『キョンへ
今回突然こんな事を言って君はそれなりに混乱してるだろうと思う。
謝るよ、ゴメン。ただもうこれ以上自分の中の気持ちを抑えられそうになくて。
どうせ君の事だから渡す寸前まで気付いてなかっただろうけど、
僕は君の事が実の所相当前からずっと好きだったんだよ?
僕なりアプローチもしたつもりだったんだけど
キョンにはことごとく無視されたっけね。まったく酷い奴だよ君は。
いままで僕がどれほどやきもきしたと思ってるのかな?
……いや、それはまぁ僕が素直に言えない意気地無しだった所為もあるかな。
ねぇキョン、君がいま色々と大変な事になってるのは知ってるよ。涼宮さん関係でね。
それでも、言っておきたかったんだ。僕は君が好きだよって伝えたかったんだ。

ははっ、迷惑なのもわかってるよ。いや僕の自己満足に巻き込んで悪かったね。
これからも僕達は親友だよね?   佐々木』


 以上が、佐々木からのメッセージだった。

「あの馬鹿…」

 なんで最初から諦めてるんだよ。
だから、お前は俺にチョコを渡してすぐいなくなってしまったのか?
自分には他の道が無いみたいな言い方はよしてくれ。頼むから…。
そんな事を言われて、ほっとけるほど俺は…。




239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 07:33:47.06 ID:HfL57IcTO

―――

 翌日、昨日が金曜でなければ当然この日も基本的には休みである筈がなく、俺は静々と登りだけのジェットコースターを朝から心行くまで満喫させてもらった。
天気は快晴とは言い難く、なんとも嫌な雰囲気を醸し出していた。

「……」

 本日な懸案事項は二つ。
 一つは当然古泉の事、嫌でも部室で顔を合わせる以上はなにかしらの言を用意しておかなくてはなるまい。
次に来るのがハルヒか佐々木か怪しい所だが、今日は佐々木では無い。
つまりはハルヒだ。佐々木に対する返答も問題だが、それは古泉に対するそれと同一視して、いまは構わないはずだ。




241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 07:48:04.59 ID:HfL57IcTO

 昨日あれからつらつらと考えていると、妹が忍び寄るジャガーのような目をしながらお茶を入れてくれたと言って部屋に進入してきて、その後の攻防も含めて、考えは霧散してしまい。
気を取り直してSOS団の女性陣より頂いたチョコを開けたのだが。

 そこには3種類の小さなチョコが所狭しと詰められていた。
完璧な立方体(計った訳じゃないが俺は完璧な立方体だと疑わなかったね)の形をしたもの。
一つ一つが微妙に形状の違うスペードのかかれた(なぜスペードなのかは推し量るべしか)短い円筒状のもの。
そして最後に、たくさんの上記のチョコに囲まれた、一際目立つ中心のチョコ。
たどたどしい文字で『キョンへ』とかかれた歪なチョコレート。

 もうどれが誰だか考えるまでもない。意図的に間違えようとしない限りは初対面でもわかりそうな個性を全面にだしたチョコだった。




244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 08:06:49.62 ID:HfL57IcTO

 ここまで問題はなさそうに見受ける。今日のハルヒのチョコに関する問いには意図も簡単に正答できるだろうし、まさか佐々木と同じように誰かに告白を受けた訳じゃない。
確かにそれぞれからのメッセージカードは同封されていたが…。
しかしとんでもない話だ。ハルヒに告白なんかされたら、むしろその場合の方が大問題だ。
その後一週間は最大級の懸案事項として頭に在り続けるだろうことは明らかだ。

 だからこの場の問題とはつまり、誰がなにをの部分で、あの完璧超人の呼び声の高いハルヒがこんなに歪に作ったチョコがなにを象ったのかと言う話だ。
正直なににも見えない。あいつには芸術的才能に関してのみ、その力を発揮できないのだろうか?
そういや、いつかSOS団のシンボルを書いた時も意味不明の宇宙情報だったか。
今回もそう言うパターンじゃないだろうな?


 などなど、螺旋の如く派生し続ける思考が俺の昨日からのハルヒチョコに対する感想だった。
味は普通に美味しく、そこは流石と言う感じだったが。いつまでも造形美からは程遠いそれから意識は離れなかった。

 あぁ、食ってしまったから仮に宇宙言語チョコだとしても、もう関係ないか。ごちそうさま。




334 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 17:37:36.01 ID:HfL57IcTO
「よっキョン」

 校舎も見え始め、坂も緩やかになってきた所で谷口と合流した。
いつものように無駄話をされる前にこちらから話を降って見る。
当然話題は昨日の事。

「お前はどうなんだよ?」

 ん、俺か?
意外と核心だな。

「どうせ涼宮達にもらったんだろ?」
「まぁな」
「いいな~朝比奈さんの手作りチョコかよ…」
「まぁな」




372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 20:22:56.15 ID:HfL57IcTO
 それから谷口のチョコなし記録更新に関しての、非常に無益な愚痴をひたすらに右から左に受け流しながら、俺は教室についた。
ハルヒの俺を見つけた瞬間の笑みがまた喜色満面と呼ぶにふさわしく、俺に少し分けてもらいたいと思う。

 やたら軽い鞄を机に引っ掛けて、先手必勝とハルヒに向かって声を掛ける。
谷口の話をスルーしてる間も考えていたが結局わからずじまいだったしな。

「よぉハルヒ、あのオブジェなチョコは一体何星人を象ったんだ?」

 先んじてそう茶化し気味に言ってみる。
流石のハルヒもこれだけで憤慨するとは思わんしな。

「はぁ?」
「いや、中心にあった奴がお前の作品だろ? 四角いのが長門でスペードが朝比奈さんだよな?」
「へぇ、マヌケなあんたにもそれぐらいの判断力はあったようね」

 そりゃそうだろう。あからさまだったからな。




390 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 20:59:36.44 ID:HfL57IcTO

 とりあえず俺の勘違いによる判断ミスの可能性はこれで無くなった。
あとはハルヒのチョコ像の問題だが…。

「で、キョン」

 それに関してもどうやら解決らしい。


「私のチョコがなんだって? 何星人?」
「あぁ、奇抜なデザインだったな。なんの形かはわからんかったが……。まぁ美味かったぞ、流石だな」
「ふん、なんか面白い形なしようと思ったんだけどね~。ま、あんたにはあれで十分でしょ?」
「はいはい、欲しい物あるなら言っとけよ?…当然そんな高い物は無理だがな」

 期待しないで待ってるわよ、と言ってハルヒは眼を窓の外に向ける。
同時に岡部教諭が扉を開けて入室。今朝の会話はこれにて終了と相成った。




392 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 21:10:51.36 ID:HfL57IcTO

 つらつらと今日の予定を口頭にて連ねる担任の言葉に軽く耳を傾けながら。
一時間目の教科書を机からとりだす。ハルヒは話をやめてからまだ5分も立っていないのに机に突っ伏して寝息を立て始める。
成績優秀の理由がわからないぜまったく。

「礼」

 いつの間にか担任の話は終わっていたらしく、クラス委員長の号令に遅れながら合わせる。




394 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 21:16:41.53 ID:HfL57IcTO

―――

 授業中、なんてのはこの際描写する必要はないだろう。
俺が起きていようと、惰眠を貪っていようと。特筆することがないのは同じだし、この場にこの日の授業内容を書き留めた所で誰かの関心も引ける訳でもない。
よって手抜きだろうとなんだろうと、俺はいきなり時間を放課後。
つまりは部活の時間まで早送りしようと思う。

 と言う訳で、場面は部室棟廊下に移る。




399 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 21:46:39.90 ID:HfL57IcTO

 昨日のこともあり、些か以上に部室のドアノブが重く感じる。
この後の予定を考えるに、ハルヒに休みを告げてもよかったのだが。古泉の事が気になる。
あいつだってハルヒに変な力を植え付けられた被害者だし、昨日の事はきっと機関とやらの考えなのだろう。あいつはただ、俺の近くに居たから早くそれを知って、だから―。

 わかってる、そうだったら良いのになの思考だ。
でも、超能力者以前のあいつ自身は俺の味方だと、そう思いたい。
だから。

 俺は扉を開く。




404 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 22:16:07.95 ID:HfL57IcTO

 いつもの席で本を読む長門が無言で存在して。
メイドの朝比奈さんが俺を見て、はいはい、とお茶を入れてくれて。

「おや、おはようございます」

 古泉が一人で棋譜を見ながら将棋をやっている。いつもの光景。
ただ一つ、古泉は唇の端に絆創膏を貼っていた。

「おぉ」

 ハルヒはまだきて居ない。あいつが掃除当番なのを同じクラスの俺は知って居る。
古泉と話す時間はありそうだ。




405 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 22:23:45.76 ID:HfL57IcTO

「キョン君、どうぞ」
「すみません朝比奈さん、いつもありがとうございます」

 自分の専用湯飲みに注がれたお茶を啜る。
日本茶なのだが仄かに感じる甘さに心落ち着かせて、一息つく。

「古泉、少し外で話せるか?」
「…構いませんよ」





413 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 22:43:43.76 ID:HfL57IcTO

 朝比奈さんと長門に断りを入れて、ハルヒが来たらすぐ分かるように少しだけ離れた階段の所に古泉と座り込み話し始める。

「昨日は、感情的になって済まなかったな」
「いえ、殴られて当然なことを言ってるのはわかってますから」
「……痛むか?」
「この位なら神人相手にしょっちゅうですよ。お気遣いなく」
「そうか……」

 運動部のランニングの掛け声、野球部のバットの音。
会話の続かない俺達の合間に軽快な声が割り込む。




423 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 23:22:44.95 ID:HfL57IcTO

 寒い。と思い手を擦りポケットにしまう。
古泉は、変わらずに穏和な笑みを浮かべて黙っている。

「考えは、変わりませんか?」

 ぽつり、と古泉が呟く。
野球部のホームラン音にかき消されそうなか細い声。
見れば、やや斜に構えた面構えでこちらを伺うようにしている。

「…お前には悪いが、変わらん」
「……残念です」

 演出過剰な身振りでため息をつく。
こんな時ですら、自身のキャラを演じる古泉に苛立ちが先んだつ。




428 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 23:39:20.22 ID:HfL57IcTO

「おい古泉、お前は、お前自身はどう思ってるんだ」
「と、言いますと?」

 細い目を開いて、少し笑みを抑える。

「機関とは関係なく、お前自身の考えを――」
「同じですよ、涼宮さんを最優先としてください。佐々木さんと関わるのをできるだけ避けてください、世界を考え大のために小を殺す。個人の考えなどありません、全は一、一は全。申し訳ないですがあなたの期待には答えられません」

 ……それがお前の答えか。

「そうです」
「………」

 俺はなにをしようとしたのか立ち上がり、古泉に向き直る。
が、俺がなにかをするよりも早く。


「あら、キョンに古泉君。なにしてるの?」




432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 23:49:48.95 ID:HfL57IcTO

 ハルヒはいつの間にか足音もなく接近して来たらしい。

「おや涼宮さん、いえ彼と少し話していただけですよ。男同士の話ゆえ、少々場所を変えただけです」

 ねぇ。と、目で語りかけてくる古泉の表情はすでにいつも通り、微塵も濁りのない、いつもの飄々とした笑顔だった。
俺はできるだけ平静を装って、それに同意する。

「ふぅん…ま、いいけどさ。なに? やらしい事じゃないでしょうね?」




437 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 00:00:05.23 ID:8ysY19qpO

「まさか、そんな不純な物ではありませんよ。もっと単純で複雑な話です」
「はいはい、わかったわ。とにかくその話の続きは後にして頂戴、寒いんだからさっさと部室行くわよ」

 ハルヒに急かされ、部室に戻る。長門や朝比奈さんに頭をさげて自席に座る。
……気まずいどころではない、が、帰る訳にも行かない。特に理由もなく帰るなんてハルヒが認める訳がない。仕方なしに朝比奈さんのお茶を貰い、無言でそれを啜る。
長門の本でも借りるか? と長門に目を向ける。

「どうです? 今日はチェッカーでも?」

 それを遮る様にチェス盤を掲げて、先程までのやりとりがなかったかの様に振る舞う古泉。

「……あぁ」
「では、負けませんよ?」
「……あぁ」

 ハルヒに勘付かせないため、なんだろうかね?




444 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 00:24:41.37 ID:8ysY19qpO

 パチリパチリと赤と黒の丸い駒がチェス盤の上を行き交う。
会話はない、古泉も見ない。ただ平坦に勝利宣言のみを重ねていく。

「あ、そういえば」

 肘をついてパソコンをいじっていたハルヒがふとなにかを思い出したような口振りで喋り出す。
またくだらない事でも思いついたのだろうか?

「聞きもしないでくだらないとか言わないでくれるかしら?」

 お前の発案が俺達にとって朗報であった事など、実際ほとんどないのだ。
つい、そういう言葉が口をでても仕方ないだろうが。

「行ってくれるわね。…まぁいいわ、いまは大目に見てあげる。機嫌がいいのよ私はいま!次回の不思議探索の事なんだけど…」
「あー、悪いが」

 特に意味はない、なんとなくだ。あえて言うなれば古泉に対する当てつけか。
俺は喜々として話そうとしてるハルヒの台詞を遮って、

「今週末は予定が入ってるんで、市内探索は欠席させてもらいたい」

 そう告げていた。
視界の端の古泉の顔を確認して少し清々しくなる。が、古泉だけでなく長門も朝比奈さんもハルヒ自身も全員俺を見ていた。まるで理解できない事があるかのように。




451 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 00:48:14.43 ID:8ysY19qpO

「えっとキョン君どうしてですかぁ?」

 朝比奈さんが、おずおずと俺に声を掛ける。
相変わらず可愛らしい声であるのだが、すみません朝比奈さん、あなたにも理由を教える訳に行かないのですよ、だって俺にもわからないんですから。

「ちょっと野暮用があるんですよ」

 そう誤魔化す。当然古泉と長門は騙せないだろうが、長門はなにも言わないだろうし、古泉も言った所で事態が好転しやしないのを悟ってか黙っている。今夜辺りに電話が来そうだな。

「あんたねぇ! 大事な団活と自分のくだらない用とどっちを優先するわけ!?」

 そう怒鳴るな。
どっちを優先するかなんて、俺の先の発言で明白だろう。
そもそも、大事だくだらないだはお前の基準であって俺の基準じゃない。
人の用事をくだらないよばわりするな、お前だって聞きもしないでくだらないとはなんだと先程俺にご高説垂れたばかりだろうが、自分の発言には責任を持てよハルヒ団長閣下。




464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 01:00:27.35 ID:8ysY19qpO


 ぐっと息を止めて、なにかしら俺に不平不満をぶつけようと思案していたハルヒだったが、
結局なにも浮かばなかったのかなんなのか、「勝手にしろ馬鹿キョン」
と言い残して文芸部室を飛び出してしまった。

「やってくれましたね…」

 古泉が恨めしそうな声色と表情で俺を睨む。
俺はそれにとりあわずに自分の鞄を引き寄せて、朝比奈さんと長門にだけ別れを告げて部室をでた。
外は一層寒かったが、非常に爽やかな気分だった。

「帰るか…」




470 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 01:10:39.71 ID:8ysY19qpO


 雪でも降るんじゃなかろうか? むしろ降ってくれれば気分も盛り上がると言うのに。
鞄を脇に抱えつつ坂をくだりながら空を見上げる、分厚い雲が太陽を隠して白く発光している。
雲の切れ目からは光が筋となって長く煌めき、カメラを構えたい衝動に駆られる。

 思わず笑いだしそうだった。
 苦々しそうな古泉の声も、
 困惑する長門の表情も、
 慌てる朝比奈さんの態度も、
 すれ違い様に見えたハルヒの切なそうな瞳も、
俺の高揚感を邪魔できやしなかった。初めてハルヒにした完全に個人的な拒絶は、俺を大きく変えた。




476 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 01:24:00.01 ID:8ysY19qpO

――

「キョン君今日ははやーい!」

 と言いながら、俺に突撃してくる妹。
危うく後ろにひっくり返る所を靴棚を掴んで耐えきり、可愛い妹を身体から引き剥がす。

「どうしたのキョン君? 今日なにかあったの~?」

 足に再度しがみつきながら上目遣いに質問をしてくる妹。
なかなか鋭い奴である。

「べつになにもない。ほら、女の子ならもう少しそういった行動は慎みなさい」
「やだー」

 妹を足に絡ませたまま自室に向かう俺。片足にのみ重りがあるので自然片びっこになる。
ん? これ差別発言か? …まぁいい。

「こら、階段は危ないから離れろ」
「やーん」
「やーんじゃありません」




481 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 01:35:15.63 ID:8ysY19qpO

 妹から逃げてバタンと部屋の扉をしめて一息。時計を一瞥してから、すぐに着替えを行う。
黒のジーンズにTシャツ、上着にダウンを羽織り、携帯と財布を持ってすぐ部屋をでる。
目的地は毎度お馴染みの駅前の公園のベンチ。

「あれ? キョン君どこいくのー?」
「ちょっとそこまで」
「じゃあアイス買って来てよ!」
「お腹壊しても知らないぞ?」
「大丈夫だもーん」

 軽く妹と会話を交わして家をでて、自転車に跨がる。
時間はまだ余裕があるが、早い分には問題ない。
目指せ公園。




486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 01:48:14.56 ID:8ysY19qpO


「おや、まだ待ち合わせ時間より30分も早いと言うのに君がもう来るとは。しばらく待つだろうと買った缶コーヒーが無駄になってしまったじゃないか」

 自転車を不法駐輪して公園のベンチにて寛ぐ佐々木に呼び掛けた際の、佐々木の第一声がそれだった。なぜ早く来たのに俺は責められてるのだろうか?
まったく不当な非難だが、なぜか不快感は微塵もない。
しかし寒いな、とりあえずどこか入るか?

「そうだね、この寒空の下わざわざ立ち話する理由もない」

 ベンチから立ち上がりながら佐々木はそう言い、暖をとり、落ち着いて話をするために近くの喫茶店に入る事になった。

 駅前公園付近の喫茶店、と言うと嫌でもSOS団御用達のあの喫茶店を想起しがちだが、今回は違う喫茶店だ。佐々木のススメだが、……わざと違う喫茶店にした、のだと思う。




496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:03:12.57 ID:8ysY19qpO

 カランと涼やかなベルが鳴り、店員が音に反応して近付いてくる。
人数と喫煙と禁煙の席の如何を聞いてから俺と佐々木は席に案内される。

「しかし、昨日の今日でいきなり呼び出されるとは思わなかったよ」

 席に着き、お手拭きで両手を丹念に拭いながら佐々木はそう始めた。

「どういうことだ?」
「メッセージカード、を君は読んだかな?」
「……あぁ」
「あそこに書いた文面で君は察しただろうが、僕は君と恋仲になるつもりであのチョコを渡した訳じゃない」

 注文をとりに来た女性店員に佐々木は紅茶、俺はコーヒーを頼む。
周囲にはバレンタインの翌日と言う今日の位置付けの所為か若い男女の二人組が結構見受けられた。

「そうだろうと思ったさ」
「それは僕が君に対し嘘の本命を渡したと言う意味じゃない。そりゃ君と恋人同士になれたらこれ以上は無いと思っていたし、それを勿論望んでいた」

 店内はシックな雰囲気の洋風造りで、クラシックがBGMとして気に触らない程度の音量で流れている。
そして微かに香ばしい珈琲の匂いが漂い、「あぁ良い店だな」と素直に俺は思った。




503 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:28:25.75 ID:8ysY19qpO

 店内は前述の理由からかそれなりに混雑しているのだが、店側もこの時期は人数を増やしているのか
俺と佐々木が頼んだモノは対して待たずにテーブルに運ばれて来た。

「僕はカードに書いてあった通り、君に気持ちを知ってもらうためにチョコを渡したんだよ」
「なるほど……」

 テーブルに置かれて小さな瓶から砂糖とミルクを少量ずつカップに入れる。
よくある描写の様に、ミルクがクルクルと円を描くことはなかったが、しかしふんわりと広がる白は美しかった。

「でだキョン、いまの僕はこうして普段通りを装ってはいるけれど内心ドキドキなんだよ。それは当然だよね? つまり僕は予想外にもこの瞬間君に告白の返事を面と向かって告げられようとしてる訳だから。
これが緊張せずにいられるかい? チョコを持って君の学校で君を待ち伏せした時よりもいまの僕の心臓は飛び跳ねてるよ」

 佐々木はミルクをたっぷり入れた紅茶を一口。
音も無く啜る、にっこりと笑ってみせた。

「だからキョン。もうチョコの最初の意図なんかもういい、君の返事を、君の心が誰に向いてるのか、僕とこれからどういう関係を築いて行くのか、はっきり聞かせて欲しいんだ」

 やや大きな声で喋る佐々木を見ながら、どうやら緊張してると言うのは事実らしい。
そう周囲の視線が集まるのを感じながら、理解した。




517 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:47:19.35 ID:8ysY19qpO

 時間稼ぎに、コーヒーにゆっくりと口をつける。
熱くほろ苦い液体を口に含み、二度三度口の中を転がして。
カップを皿にゆっくりと戻す。

 その一挙手一投足を佐々木は沈黙を保ったまま見つめ続ける。
またこの動作によって周囲の客に注目を受けてる事はほぼ確定的になった。

「佐々木…」

 もったいぶって、話始める。
答えはもう、決まってるくせに。

「……なんだい?」
「お前が、最初から諦めた本命チョコを渡そうとした理由にハルヒは関係してるか?」

 俺の発言に戸惑いを見せる佐々木。これは隠そうとしていたのだろうか?
でも少し考えれば、想像に難くない。
佐々木はしばらく逡巡していたが、躊躇いがちに頷いた。

「そうか…」

 もう一口、コーヒーを飲む。やたらと唇が乾くのは俺も緊張してるからか。




520 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:52:02.15 ID:8ysY19qpO


 軽く、深呼吸をし。
佐々木に向き合い、真剣な瞳を真直ぐ見据える。

「佐々木」

 耳鳴りがする、低く高くノイズが流れるが、惑わされない。

「……うん」

 小さく、呟く佐々木に向かって俺は。

「俺と、……付き合ってくれるか?」

 運命の一言を発した。




523 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:53:13.28 ID:oPFbAAkc0
喫茶店の客のスタンディングオベーションが目に浮かぶ




525 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:54:08.37 ID:b7kVpnZOO
俺「おめでとう」




526 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:57:59.88 ID:QlgFllm70
客が絶対反応してるwww




527 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 02:58:51.50 ID:ExGYk5DU0
客1「おめでとう」
客2「おめでとう」
店員「おめでとう」
店長「ありがとう」




528 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:07:55.22 ID:8ysY19qpO


 それからの事はダイジェストで語ろうと思う。
俺の発言に泣き出しながら、「はい」と答えてくれた佐々木、そしてそれに胸を撫で下ろす間も無く、客から店員から拍手喝采を浴びた。

 羞恥の頂点を極めた俺は慌ててコーヒーを飲み干して、嬉し涙を浮かべる佐々木と店を後にした。
ただ会計の際、店員の善意により店側に奢ってもらったことは追記しておく。

 そして、ある程度店から離れて落ち着いた所で、佐々木に熱い抱擁を受けた。
こうして俺と佐々木はめでたく、恋人同士になったわけで。




538 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:24:21.64 ID:8ysY19qpO

 ただ、これでめでたしめでたしにならない事は俺が一番理解していた。
俺は佐々木と次の土曜に出掛ける約束をしてから、家まで送りとどけ。帰路に着いた。

 そして、

「なんのようだ?」

 佐々木宅ど我が家の中間地点。電柱に凭れるように古泉が立っていた。

「あなたがいけないんですよ」

 古泉は独り言のように呟く。
俺は先程まで押していた自転車に跨がるべきかどうか迷った。

「あなたが僕達の話を聞いて頂けないから、悪いのです」




539 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:25:54.98 ID:8XIi0oXn0
なん・・だと・・




541 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:26:48.81 ID:vO5BWjs70
ヤン……デレ……?




545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:39:51.16 ID:8ysY19qpO

 俺の、この一年間で鍛えられた第六感が危険信号を発している。
にも関わらず、俺はこの場から動かない。
自らの意思でこの場にとどまった。

「あなたが佐々木さんと会っている間、我々は最大級の閉鎖空間内部で神人と戦っていました」

 ……俺は沈黙を保つ。
なにも言わずに古泉を見つめる。

「僕は軽傷で済みましたが、重体の人間もでました」




548 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:44:02.36 ID:TpuQou6u0
団活サボリでコレなら佐々木と付き合い始めたってハルヒが知ったら古泉間違いなく死ぬな




549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:44:58.42 ID:KGbUxaqvO
>>548
死ぬ前に世界が書き換えられると思うぞ




556 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 03:54:11.64 ID:8ysY19qpO


「なにが、言いたい」
「あなたには失望しました」
「……だからどうした」
「佐々木さんとも付き合う事になったそうで」
「…監視も大概にしろよ、そう言う所が不愉快なんだよ、俺を監視する必要がどこにある」
「……あなたには失望しましたよ」
「だから、それがどうした!?」


「涼宮さんは恐らくその事を既にある程度知ってしまってます」

「……なんだって?」

「あなたが彼女を拒絶してから、閉鎖空間の発生にはタイムラグがありました、正確には34分42秒程。そして閉鎖空間が発生したのは駅前の公園を中心とした広域。空間の規模、場所、神人の強さ、発生のタイミング。全てではないでしょうが、ある程度は悟ったでしょう。
彼女は聡明だ。もう、あなたが彼女に謝ろうとなにをしようと意味はなくなってしまいました。……呼び出しですね。言いたい事はまだあるのですが、彼女はこの期に及んであなたが傷つくのを見たくないそうで。もう部室にはこない方がよろしいかと、僕もあなたと再度顔を合わしたくありません。……では」




564 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/23(月) 04:14:51.64 ID:8ysY19qpO


 自転車を押して段差を越え、柵を開けて自宅の敷地にin、
自転車の鍵を抜いて、籠からビニール袋を手に取り玄関を開ける。

「キョーン君、おかえりー! ……あれ? キョン君?」

 いつもの強烈な出迎えを受けてから、妹にアイスの入ったビニール袋を渡す。

「え、あっ…うん。ありがとうキョン君」

 なんだ歯切れの悪い、嫌いなアイスだったか?

「ううん、そうじゃないけど…」

 けど、なんだ?

「キョン君、怪我したの? なんか痛い顔してるよ?」
「……そんな事ない」
「本当に…?」
「あぁ、本当だ。安心しろ」
「…うん」

 妹の髪を何度か乱暴に撫でてから、俺は自室戻った。






その2へ




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コメント
この記事へのコメント
  1. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 02:36: :edit
    1げと
  2. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 02:40: :edit
    2ゲト
  3. 名前: 名無し超速報! #-: 2009/03/13(金) 03:23: :edit
    以下ゲッター死亡
  4. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 03:52: :edit
    佐々木と聞いて飛んできました
  5. 名前:   #-: 2009/03/13(金) 05:24: :edit
    >>37までしか読んでないけどそれ以降は蛇足。
  6. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 05:47: :edit
    一粒で2度おいしいから読んでおいた方がいいよ
  7. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 06:42: :edit
    店長w
  8. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 08:22: :edit
    >>9で腹筋崩壊
  9. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 08:29: :edit
    原作だと2/14は休日だったよな
  10. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 10:02: :edit
    さいしょのあれは・・・
    蜃気楼だったのか・・・!?
  11. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 11:11: :edit
    あれ?
    ≫10ぐらいで投げたんだが
    もっと読んだほうが良かったか?
  12. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 12:09: :edit
    米11
    確実にお前は損してる。
  13. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 12:38: :edit
    最初アレはなかったことにしました。
  14. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2009/03/13(金) 14:18: :edit
    最初のアレで終わってれば神スレだったのにな・・・。
  15. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 14:29: :edit
    タイトルだけ見てwktkして遅い昼食とりながら読もうとしたらこれか
    …さて、どうしようかこのカレー
  16. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 16:09: :edit
    最初が文字通りのクソスレで吹いたw
  17. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 17:40: :edit
    職場で休憩中に読んでてあまりの予想外の展開で吹き出すのを堪えるのに必死だった。
    >>1は天才だと思うよ


    ではその2読んできます
  18. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/13(金) 20:35: :edit
    何でかな…?

    飯中だったのに吐き気が全然しなかったんだ……

    佐々木…おそるべし!
  19. 名前: 名無しさん #-: 2009/03/13(金) 21:35: :edit
    あっぶねえ
    スカトロになった時点でブラウザ閉じそうになった
    >>44GJ
  20. 名前: 名無しさん #-: 2009/03/13(金) 21:58: :edit
    古泉うざいってレスがあったが・・・

    原作読んでても思ったんだが一番うざいのはハルヒだよな

    キョンはキレてもいい
  21. 名前: VIPPERな名無しさん #-: 2009/03/15(日) 20:52: :edit
    >>1の佐々木の方が好きだなぁ。
    後続はぜんぜん佐々木らしくなくて嫌だ。
  22. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/15(日) 22:21: :edit
    これが載ることを信じていた
  23. 名前: 通常のナナシ #-: 2009/03/19(木) 07:09: :edit
    客1「おめでとう」
    客2「おめでとう」
    店員「おめでとう」
    店長「ありがとう」

    店長wwwwwwwww
  24. 名前: 通常のナナシ #-: 2010/02/20(土) 22:25: :edit
    >>37までのハルヒはうざくないな
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